私有地の駐車スペースに、見知らぬ車が勝手に止まっていた…。
そんな無断駐車の被害に遭ったとき、「罰金を請求してやりたい」と思ったことはありませんか?
しかし、私有地での無断駐車に対して、個人が勝手に罰金を請求するのは法律的に認められず、場合によっては違法と判断される危険な行為です。
本記事では、私有地における無断駐車への正しい対処法を解説しつつ、「手順を踏めば合法的に請求できるのか?」という疑問にも答えます。
さらに、トラブルを未然に防ぐための予防策まで、わかりやすくまとめました。


私有地の無断駐車に「罰金」は取れるのか?

罰金と損害賠償はどう違うのか?
まず押さえておきたいのは、「罰金」と「損害賠償」はまったく別の仕組みだということです。
罰金は刑事事件に対して国が科す刑罰で、個人が徴収することはできません。
一方で損害賠償は、民事上のトラブルで被害を受けた側が相手に補償を求める制度です。
つまり、無断駐車は刑事罰の対象にはならず、「罰金」として請求することは不可能なのです。
個人が「罰金」を掲示してはいけない理由
駐車場でよく見かける「無断駐車は罰金◯万円」といった張り紙は、一見すると抑止力になりそうですが、法的には危険な行為です。
罰金を科す権限は警察や裁判所にしかなく、個人が金額を設定して徴収すれば「恐喝」「不当利得」とみなされる可能性があります。
抑止効果どころか、自らが法的リスクを背負うことになりかねないのです。
損害賠償が認められるケースと注意点
実際に損害が出ている場合には、損害賠償請求が可能です。
代表的な例は次の通りです。
- 契約者が駐車できず、別の駐車場を利用して費用が発生した場合
- 店舗や事務所の駐車スペースが塞がれて売上に影響した場合
- 社用車や従業員が利用できず業務に支障が出た場合
ただし、請求には証拠が欠かせません。
「迷惑だから払え」というだけでは認められず、金額を裏付けられる資料が必要です。
警察や行政は対応してくれるのか?

警察は「民事不介入」が原則
私有地に無断で駐車された場合、多くの人がまず警察を思い浮かべます。
しかし、警察は原則として「民事不介入」の立場をとり、単なる駐車トラブルには直接介入しません。
事故や犯罪性が明確な場合を除き、「話し合いで解決してください」と案内されることが大半です。
例外的に、盗難の疑いがある車両やトラブルが激化しそうなケースでは対応してもらえる場合があります。
レッカー移動できるケース・できないケース
「勝手に車を動かしてしまえばよい」と考えるのは危険です。
他人の車を無断で移動させれば、こちらが加害者になりかねません。
レッカー業者も、所有者の同意なしに動かすことは基本的にできません。
ただし、明らかに長期間放置され所有者不明と警察が判断した場合には、放置車両として行政手続きのうえ移動が認められることがあります。
その際には日数や状況の記録が重要です。
相談できる公的窓口や弁護士の活用
どうしても解決が難しい場合は、公的な窓口や専門家を活用するのが安心です。
市区町村の市民相談窓口や法テラス(日本司法支援センター)では、弁護士に無料または低料金で相談できます。
また、常習的な嫌がらせが疑われる場合は、警察の生活安全課に相談することも可能です。
早めに専門家へ相談することで、感情的なトラブルを避け、冷静で合法的な対応につなげられます。
実際に取れる対処法とステップ

現場で行うべき対応(証拠の残し方)
無断駐車を発見したら、最初にすべきは証拠を残すことです。
- 車両ナンバーや特徴を撮影する
- 停車していた日時を正確に記録する
- 駐車場所全体が分かる写真や動画を残す
- 近隣住民や従業員の目撃証言を確保する
こうした記録が後の交渉や裁判で決定的な証拠になります。
損害賠償請求の流れ(少額訴訟の活用も含む)
実際に損害が発生した場合、次のような手順で請求を進めるのが一般的です。
ここでも証拠の有無がすべての決め手となります。
トラブルを避けるための注意点
対応の過程で、感情に任せた行為は禁物です。
車に直接張り紙をしたり、強い口調で相手を追及すれば、「名誉毀損」や「威力業務妨害」として逆に訴えられる可能性があります。
また、相手が謝罪や弁償の意思を示した場合には、必要以上に強硬な態度をとらず、冷静に話し合うことが解決への近道です。
法的に許される範囲を守りつつ、落ち着いて対応することが、トラブルを長引かせないための最善策といえます。
予防策として有効な方法

法的に正しい表現を用いた警告文例
無断駐車を抑止したい場合は、法的に問題のない文言を用いた警告文を掲示することが大切です。
とえば以下のような表現が適切です:
- 「無断駐車はお断りします。発見次第、警察・関係機関に通報します」
- 「当駐車場は契約者専用です。無断駐車には損害賠償請求を行う場合があります」
このように、「お願い」や「通報」「損害賠償の可能性」など、事実を穏やかに伝える表現が、法律的にもトラブル回避にも有効です。
防犯グッズや物理的な対策(チェーン・ポールなど)
無断駐車が繰り返される場所では、「入りづらくする工夫」と「見られている意識」をセットで取り入れると、高い抑止効果が期待できます。
- ポールやチェーンの設置:出入口に物理的な障害を設けることで、勝手に入りづらい環境をつくれます。
- 防犯カメラ+「録画中」ステッカー:入口から駐車スペースまでを映せる位置に設置すれば、記録と心理的プレッシャーの両方に効果があります。
このように複数の対策を組み合わせることで、無断駐車の再発を防ぐことにつながります。
設置の際には、人の通行を妨げないか、法律や建物の管理規約に違反しないかも事前に確認しておくと安心です。
まとめ:無断駐車に罰金はNG!合法的な対処と予防を知ろう
私有地に無断駐車されたとき、怒りに任せて罰金を取ろうとするのは危険であり、法的責任を問われるおそれすらあります。
正しく対応するには、まず状況を丁寧に記録し、必要に応じて警察や弁護士といった専門機関に相談する冷静さが欠かせません。
実際に損害が生じている場合は、少額訴訟などを通じて正当な賠償を求めることも現実的な選択肢です。
再発を防ぐには、防犯カメラや「録画中」の表示、チェーンポールの設置、法的に適切な注意文の掲示といった対策が効果的です。
感情に流されず、法と証拠に基づいて対応することが、トラブルを大きくせず自分の権利を守る最善の方法といえるでしょう。

