2025年11月14日、日本代表はキリンチャレンジカップ(会場:豊田スタジアム)でガーナ代表と対戦します。
この一戦で日本が本気で勝利をつかみにいくなら、中盤の要・トーマス・パーテイの存在を見過ごすわけにはいきません。
彼はガーナ代表の守備的MFであり、現在はスペイン・ラ・リーガのビジャレアルに所属しています。
中盤でのボール奪取と試合のリズム構築を担いながら、最終ラインの前から前方へ鋭い縦パスを差し込み、攻撃のスイッチを入れる“攻守の架け橋”のような存在です。
日本にとって危険なのは、ボールロスト直後にパーテイが“最初の一手”を握り、中央のレーンを縦に突かれて前を向かれる場面。
一気に守備ラインを押し下げられ、波状攻撃の起点を作られるリスクが潜んでいます。
そんな“中盤からの前進”と、“セットプレー周辺でのファウル管理”という2つの観点から、ガーナ戦をどう読み解くかを考えていきます。
日本が勝つために必要な、現実的で実践につながる視点をここで掘り下げていきましょう。


トーマス・パーテイとは何者か?ガーナ中盤の“心臓”を担う司令塔

日本が「どこを止めるべきか」を見極めるには、トーマス・パーテイという選手の本質的な特徴を整理しておく必要があります。
まずは彼のプロフィールや代表・クラブでの役割、そして攻撃を動かす前進パスやキック精度といった特性を、ひとつずつ見ていきましょう。
プロフィールと所属クラブ・代表での役割
トーマス・パーテイは、ガーナ代表の中盤底を任される守備的MFで、現在はスペイン・ラ・リーガのビジャレアルに所属しています。
メ ッ シ V S ト ー マ ス ・ パ ー テ イ
代表チームでは中盤の“基準点”として位置づけられ、最終ラインと前線をつなぐ重要なパイプ役を担っています。
試合のテンポを落ち着かせる調整力に加えて、奪ってからの一手で攻撃のギアを上げる力もあり、守備と攻撃を橋渡しする存在感は抜群です。
相手の出方やチームの狙いに応じて、左右の幅や縦方向への推進力を自在に調整する柔軟性も持ち合わせています。
こうした戦術理解力と安定感が、ガーナの中盤を支える“屋台骨”としての評価につながっています。
前進パスとキック精度 一撃で局面を変える技術
パーテイは、最終ラインの前から斜めに差し込む鋭いパスを通せるほか、ミドルレンジからのシュートやフリーキックでもゴールを脅かす力を備えています。
実際、2018年5月30日に横浜で行われた日本戦では、直接FKを決めてガーナに先制点をもたらした実績も残しています。
流れの中でも、前線の動き出しにピタリと合うテンポでパスを供給できるため、セカンドチャンスの起点にもなりやすい選手です。
相手の守備が一瞬でも緩めば、そこを突いて「前進するか」「直接狙うか」という二択を強引に突きつけてくる。
その一手が試合の流れを変える。まさに局面を変える男といえるでしょう。
パーテイの直近パフォーマンスをどう見るか?

試合を予測するには、印象や評判ではなく、事実ベースの“最新情報”を押さえることが欠かせません。
ここでは代表・クラブ・コンディションの3つの視点から、パーテイの現在地を具体的に見ていきます。
果たして今の彼は、日本戦でどこまでの影響力を発揮するのでしょうか?
代表戦で見せた“初手の起点力”とは
2025年10月12日のW杯予選「ガーナ 1–0 コモロ」では、後半開始直後の47分、パーテイが中盤から出したスクエアパスをモハメド・クドゥスが押し込み、これが決勝点となりました。

この場面は、まさに守備から攻撃への切り替え直後に“最初の一手”で前向きの受け手を作るという、パーテイの持ち味が光ったシーンでした。
たった一度の前進が勝敗を決める。そんな展開が実際に起きたことは、日本戦を読み解く上でも大きな示唆を与えてくれます。
試合はガーナのホーム・アクラで行われ、代表の主軸として結果が求められる中でも、パーテイは冷静に判断し、決定的な一手を実行してみせました。
この事例を踏まえると、日本が“ロスト直後の初手”をどれだけ遅らせられるかが、試合の命運を握る鍵になりそうです。
ビジャレアルでの出場状況と起用傾向
2025年8月7日、ビジャレアル加入がクラブ公式から発表され、パーテイは今季(2025-26シーズン)の戦力として正式に編成へ加わりました。
リーグ戦では先発4試合・途中出場4試合の計8試合に出場しており、起用は段階的に増えてきています。
さらに欧州カップ戦でもベンチ入りが報じられ、国内外のコンペティションを通じて着実に実戦復帰を進めている段階です。
全体としては、継続出場によってフィジカルや連携面のフィット感を高めている途上と見るのが自然でしょう。
そして日本戦でも、出場時間や投入タイミング次第でパーテイの“影響力”が大きく変わることは十分に想定されます。
怪我の履歴と現在のコンディションを検証
パーテイはこれまでに、ハムストリングや鼠径部の故障による離脱歴を抱えており、2023-24シーズンには長期、2024-25には短期離脱が記録されています。
こうした経緯もあって、現在の起用には「試合間隔の慎重な管理」が不可欠な条件となっています。
ただ今季はリーグ戦で8試合に出場しており、実戦復帰が着実に進んでいることは出場実績からも明らかです。
直近のコンディションはおおむね良好と見てよさそうですが、連戦が続く中で再発リスクへの警戒は引き続き必要です。
特に日本戦では、途中出場から一気にギアを上げてくる可能性もあり、交代後の“守備の気の緩み”が命取りになる展開も十分に考えられます。
パーテイの前進パスをどう止める?日本の守備構造と3つの対応策を解説

日本がこの試合で勝利に近づくための最短ルートは、中盤の“心臓部”とも言えるトーマス・パーテイに、前向きの“初手”を握らせないことに尽きます。
彼は最終ラインの手前から、中盤を一気にスキップする鋭い縦パスを供給できる選手で、各種データでも前進パスの精度と貢献度は高く評価されています。
もし日本が、内側のレーン(アンカー横〜CB前)をうまく封じられなければ、モハメド・クドゥスらが前を向いてボールを受けるシーンが増え、そこから決定機が連続して生まれるリスクが高まります。


特に注意すべきは、ボールロスト直後。守備の準備が整う前にパーテイに“最初の一手”を打たれると、一気に押し込まれる危険性があります。
こうした背景を踏まえ、「通路(中央レーン)」「時間(ロスト直後)」「反則(PA前)」という3つの評価軸に着目しながら、ガーナ戦における日本代表の対応策を具体的に整理していきます。
中央突破を止める“守備原則”:通路・時間・反則をどう封じるか?

相手の攻撃を止めるうえで重要なのは、個の守備力ではありません。
「通路・時間・反則」を全員でコントロールし、11人で相手のリズムを奪うチーム全体の設計思想こそが鍵になります。
パーテイへの縦パスを遮断する中央レーンの守備設計
まず徹底したいのは、受け手が立つ内側レーンを先に消し、パーテイに“横パス”や“背戻し”しか選ばせないように誘導することです。
2列目の選手は「カバーシャドウ」で縦の差し込みを封じ、体の向きは常に内側を閉じる形を意識します。
サイドバックは外側から圧力をかけ、内へのパスコースを味方の“影”で覆い続ける。
アンカーはセンターバック前のスペースを先回りして管理し、前向きに受けに来る相手とは“半身の距離”を保ちながら迎撃します。
この形を継続できれば、相手の前進スピードを確実に削ぎ、守備ブロックを押し下げられる展開を未然に防げます。
ロスト直後3秒の対応:“初手”を消す同時到達の守備とは?
攻撃が途切れた直後の3秒間。この時間帯こそが、最も危険なゾーンです。
パーテイと最初の受け手に“同時到達”する意識をチーム全体で共有する必要があります。
最も近い選手は角度を優先して速く寄せ、後続は背後の通路を閉じて前向きな展開を断ち切る。
前線の1枚も、守備への戻りをスイッチとして明確に持ち、発動したら迷わず中央に絞って連動します。
仮に奪えなくてもテンポを一拍遅らせられれば、全体の守備ラインを整える時間を稼げる。
この“同時到達”が習慣化すれば、切り替え直後の決定機を確実に減らすことができます。
PA前のファウル回避術:誘導・接触管理・二次対応の基本
ペナルティアーク付近では、無理に触らない“勇気”が求められます。
外側へ誘導し、シュートコースを限定する判断が最優先です。
寄せに行く際は、足元はボールに向け、上半身は外へ開いて接触の強さと方向をコントロール。
やむを得ずファウルを与える場合でも、壁の配置と同時に“こぼれ球”への二次対応ラインをすぐに準備します。
マークの受け渡しはプレー再開の瞬間に明確化し、流れ弾からの再攻撃を即座に封じる。
こうした管理を徹底すれば、単発の笛がそのまま失点に直結するリスクを確実に減らせます。
まとめ:中央レーン・初手・PA前 3つを制したチームが主導権を握る
日本が勝利を手繰り寄せるために重視すべきは、中央レーンの通路管理、ボールロスト直後3秒間の対応、そしてPA前での反則回避という3つの守備要素です。
とくにトーマス・パーテイには前を向かせず、縦パスではなく横や後方への展開へと“逃がす”守備が、試合の主導権を握る決定打になります。
切り替えの初動を遅らせることができれば、日本は守備ラインを押し下げられず、二次攻撃の連鎖を未然に断つことができます。
PAアーク周辺での無用な接触は極力避けるべきで、仮にファウルを取られたとしても、すぐに次の対応に移れる準備が重要です。
そのためには、アンカー型かダブルボランチ型かといった布陣の違いを踏まえ、全員が役割分担とタイミングを共有する“共通認識”をあらかじめ持っておくことが不可欠です。



