ワールドカップという舞台で、ここまで「実績の薄さ」と「しぶとさ」が同居するチームは、ボリビアをおいて他にないかもしれません。
これまでの本大会出場は、1930年・1950年・1994年のわずか3回。いまだ1勝も挙げておらず、W杯で生まれたゴールも1994年のスペイン戦で記録した1点だけという、控えめな歩みが続いています。
それでも、1994年の南米予選ではラパスであのブラジルを破って自力で本大会出場を決め、近年の2026年予選でも再びブラジルを1–0で撃破し、大陸間プレーオフ進出をつかむなど、要所で強豪を食うしたたかさは健在です。
現在のFIFAランキングでは76位と、世界全体では中堅〜やや下位寄りのポジションですが、南米10か国の中では実績面でも数字面でも、はっきりと下位グループに位置づけられる存在と言えるでしょう。
それでも、W杯という限られた出場枠を211の代表が争う中、何度跳ね返されても挑み続ける姿勢こそが、ボリビアを「ただの格下」とは言い切れない理由です。
この記事では、ボリビア代表のこれまでのW杯での歩みと現在の立ち位置をふまえ、その歴史を振り返りながら解説していきます。


「勝って当然」と油断してはいけないボリビアの底力

ボリビアはW杯本大会でいまだ勝利がなく、最新のFIFAランキングでも76位に位置しています。
この実績と順位を見れば、力の差を感じるのは自然なことです。
ところがそのボリビアが、1994年以来となるW杯出場を目指している中で、2026年の南米予選ではホームでブラジルを破り、大陸間プレーオフ進出を決めているのです。
W杯での実績だけを見ると、ボリビアは国際舞台では控えめな存在ですが、南米という厳しい競争の中で、今も強豪相手に結果を残している点は、ボリビアを理解する上で欠かせない要素です。
日本としては、「勝って当然」と見なされる相手かもしれませんが、南米特有の粘り強さや試合の流れを変える力を持っていることも確かです。
そのため、油断すると、思わぬ展開になりかねないという点は意識しておいた方がよいかもしれません。
数字が物語るボリビアの実力 W杯本大会と南米勢の中での現在地

W杯の舞台で、ボリビアがこれまでの大会でどのような成績を収めてきたかを見てみると、実績においてはやや厳しい現実が浮かび上がります。
大会ごとの成績を振り返ることで、ボリビアが現在の位置にある理由がより明確に感じられるでしょう。
3度のW杯出場で勝利ゼロ 唯一の得点は30年前の1点だけ
これまでボリビアがW杯本大会に出場したのは、1930年・1950年・1994年の3度だけです。
初出場となった1930年ウルグアイ大会では、招待国の一つとして参加し、ユーゴスラビアとブラジルにいずれも0–4で敗れ、2戦0得点・8失点と攻守ともに完敗を喫しました。
続く1950年ブラジル大会では、南米予選で他国の撤退が相次いだため予選免除となり、ウルグアイとの1試合のみとなりましたが、ここでも0–8と大敗。大量失点だけが記録として残りました。
そして最も新しい1994年アメリカ大会では、ドイツに0–1、韓国に0–0、スペインに1–3と、1分2敗でグループ最下位に終わります。
このとき、スペイン戦でエルウィン・サンチェスが決めた1点が、現在に至るまでW杯本大会でのボリビア唯一のゴールとなっています。
3大会・計6試合で0勝1分5敗、わずか1得点20失点。数字が示すとおり、W杯という世界の舞台でボリビアは、ほとんど存在感を示せていないのが現実です。

ボリビアのW杯記録は未勝利のまま 南米出場国の中で目立たぬ存在感
南米10か国で比較しても、ボリビアのW杯実績は明らかに控えめな部類に入ります。
出場回数3回という数字は、エクアドルやベネズエラと並んで「出場機会の少ないグループ」に分類され、ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイといった常連国とは大きな差があります。
また、コロンビアやチリ、パラグアイも複数回の出場と決勝トーナメント進出を果たしており、W杯出場経験のある南米勢の中では、ボリビアだけがグループステージ未勝利のままとなっています。
つまり、W杯本大会での実績が、ランキング水準にすら届いていないという側面も見えてきます。
南米という世界屈指の激戦区に身を置きながら、本大会の舞台では結果を出せていない。それが数字から浮かび上がる、ボリビアの現在地です。
初の実力出場とW杯の厳しさ ボリビア代表1994年の軌跡

ボリビア代表の歴史の中で、「黄金期」と呼べる時代があるとすれば、それは1994年アメリカ大会に向けた南米予選から本大会までの数年間でしょう。
ブラジルを撃破してつかんだ自力出場、そしてその勢いのまま挑んだ本大会。そこで味わった現実とのギャップまでを含めて、この時期の歩みを振り返っていきます。
高地ラパスが生んだ奇跡 W杯予選でブラジルを破った夜
1993年7月25日、ラパスの標高3,600mに位置するエスタディオ・エルナンド・シレスで、歴史的な一戦が行われました。
W杯南米予選・対ブラジル戦。終盤までスコアレスで進んだこの試合は、88分にマルコ・エチェベリ、89分にアルバロ・ペーニャが連続ゴールを奪い、ボリビアが2–0で勝利。
この瞬間、ボリビアはブラジルにW杯予選史上初の黒星をつけるという、歴史的な快挙を成し遂げました。
この勝利を含め、ホームで確実に勝ち点を積み上げたボリビアは、最終的に2位でグループを突破。
それは、これまでの招待や他国撤退による予選免除とは異なる、真に実力で勝ち取った初めてのW杯出場でした。
高地ラパスという武器と、当時の選手たちの勢いがかみ合ったこの期間は、ボリビアサッカー史における「黄金期」として記憶されています。
世界の壁は高かった 1994年W杯で突きつけられた実力差
そんな勢いを持って挑んだ1994年アメリカW杯本大会でしたが、そこでは現実の厳しさを突きつけられることになります。
グループCでドイツ・韓国・スペインと同居したボリビアは、0勝1分2敗の勝ち点1で最下位に終わりました。
3試合で記録した唯一のゴールは、スペイン戦でエルウィン・サンチェスが決めた一発。この1点は、今に至るまでボリビアW杯史上唯一の得点でもあります。
予選でブラジルを倒したチームが、本大会では一度も勝てずに姿を消す。そのギャップは、W杯という舞台がいかに高い壁であるかを示すものでした。
それでもこの1994年は、ボリビアにとって初めて世界の頂点へと自らの手でたどり着いた年。
たった1点、たった1ポイント、それでもこの年に刻んだ記録は、今も特別な意味を持ち続けています。
W杯から遠ざかる30年 実力低下と南米予選の現実が示すボリビアの苦境

1994年に初めて予選を勝ち抜き、W杯本大会の舞台に立ったボリビア代表。
しかしその後は、FIFAランキングも予選成績も長い低迷期に入り、存在感を失っていくことになります。
ここでは、世界18位から115位まで落ち込んだランキングの推移と、その背景にある南米予選での苦戦の実態を整理していきます。
世界18位から115位へ 30年で崩れたボリビア代表のFIFAランキング
1994年W杯出場、そしてコパ・アメリカでの好成績を経て、ボリビアは1997年8月にFIFAランキング史上最高となる18位を記録しました。
このときはまさに勢いに乗った黄金期のピークとも言える時期でしたが、その後のW杯予選では思うように勝ち点を積めず、結果は下降線をたどる一方に。
そして2011年10月には、ついに過去最低となる115位までランクを落とします。
1998年フランス大会以降、ボリビアはすべてのW杯予選で本大会出場を逃しており、南米予選の最終順位も10か国中、常に7位〜10位あたりを漂う状態が続いてきました。
FIFAランキング上では中位〜やや下位という見え方でも、実際には「1990年代をピークに長い右肩下がりを続けてきた代表」という姿が、この30年で浮き彫りになっています。
南米予選の現実 強豪ひしめく構図がボリビアを苦しめ続ける
ボリビアがなかなか結果を出せずに苦しんできた背景には、南米予選の過酷なフォーマットがあります。
10か国によるホーム&アウェーの総当たり戦。ここでは、ブラジルやアルゼンチンだけでなく、ウルグアイ、コロンビア、チリ、エクアドルといった実力国がひしめき合います。
多くのライバルが欧州のトップクラブでプレーする主力を揃える一方で、ボリビアは国内リーグの規模や選手層でどうしても見劣りし、勝ち点を安定して積むのが難しい現実があります。
20試合近くを戦う予選で、こうした格上との連戦が続けば、テーブル下位が定位置になってしまうのも無理はありません。
結果として、ボリビアは「長くW杯本大会に届いていない国」であるだけでなく、「出場を争うステージそのものが過酷すぎる」という二重のハードルに苦しみ続けてきたのです。
1994年以来のチャンスを呼び込んだ7位 2025年ボリビア代表、W杯へ前進

長く続いた低迷の時期を抜け、ボリビアは2026年W杯南米予選でついに浮上の兆しを見せました。
最終順位は7位、この数字は32年ぶりのW杯本大会出場へつながる、大陸間プレーオフの切符を意味します。
ここでは、新たなレギュレーションの中でどう戦い抜き、最終節でブラジルを下して希望をつないだのか、その歩みを整理していきます。
粘り強く戦い抜いた18試合 ボリビアがつかんだプレーオフ進出
2026年W杯の南米予選では、全10か国がホーム&アウェーで計18試合を戦い、上位6か国がW杯本大会へ、7位が大陸間プレーオフへ回る新フォーマットが採用されました。
この中でボリビアは、終盤まで8位あたりをさまよいながらも、ホームゲームを軸に粘り強く勝ち点を重ね、最終成績は6勝2分10敗・勝ち点20の7位フィニッシュ。
すでにアルゼンチン、エクアドル、ブラジル、コロンビア、ウルグアイ、パラグアイの6か国が本大会行きを決めていたなかで、残る「7位」をかけてベネズエラと激しく争う展開となりました。
そして最終節、土壇場でその競り合いを制し、32年ぶりのW杯出場へと続く次の扉をこじ開けたのです。
この7位という順位は、単なる中位という数字ではありません。
ボリビアにとっては「1994年以来の現実的な出場ルートを手にした」という、重みある到達点になりました。
ブラジル撃破で見えた次の景色 32年ぶりW杯へ挑戦権獲得
運命を変えた一戦は、標高約4,000mを超えるエル・アルトで迎えた最終節のブラジル戦でした。
前半アディショナルタイム、ミゲル・テルセロスがPKを沈め、ボリビアは1–0でブラジルに歴史的な勝利を挙げます。
この勝利と同時刻に行われたコロンビア対ベネズエラが6–3でコロンビアの勝利となり、ボリビアはベネズエラを勝ち点で上回って7位を確定。
ちょうど32年前の1994年大会予選でも、ブラジル撃破をきっかけにW杯出場を果たした背景があり、今回の1–0も「第二の歴史的勝利」と注目を集めています。
そして今、ボリビアはメキシコ(モンテレイおよびグアダラハラ)で行われる6か国によるプレーオフトーナメントへ。
南米代表として、残る2枠のうち1つをつかめるか。1994年以来となる本大会の舞台を目指し、もう一度大勝負に挑むことになります。
格下という先入観が落とし穴に 日本が試される内容面の差とボリビアの粘り

ここまで見てきたように、ボリビアはW杯本大会での実績こそ乏しいものの、南米予選ではブラジルを下し、プレーオフ圏を勝ち取るほどの競争力を示しています。
FIFAランキング上では日本より下位に位置する格下かもしれませんが、実際のピッチ上では、南米特有の粘り強さと守備の堅さを持つやりづらい相手として警戒すべき存在です。
南米予選で鍛えられた短期決戦仕様 ボリビア代表の実戦感覚
ボリビア代表の主力選手は、国内リーグや近隣国のクラブに所属しながらも、南米予選では年間を通じてブラジルやアルゼンチン、ウルグアイといった強豪と真剣勝負を繰り返しています。
そうした環境で磨かれるのは、球際の強さやファウルすれすれの駆け引き、わずかなチャンスを活かす一発勝負の感覚。
ラフさを含む守備対応や、カウンター・セットプレーに賭ける割り切り方など、短期決戦仕様の戦い方はFIFAランキングだけでは測れません。
実際に2026年の南米予選でも、ボリビアは高地開催とはいえブラジルを1–0で破り、プレーオフ圏の座を手にしました。
こうしたハマったときの爆発力を持つチームと対峙するうえで、日本は「技術や連携で上回っているから大丈夫」とは言い切れないのが現実です。
南米の荒れた展開やワンプレーで流れが変わる試合運びに慣れている相手だからこそ、思わぬ苦戦に引きずり込まれるリスクもあると認識すべきでしょう。
1–0の過去戦績に見る崩しの難しさ ボリビア戦が示す評価の基準
日本とボリビアが最後に対戦したのは、2019年のキリンチャレンジカップ。その試合は、日本がシュート数17対5、枠内4対0と圧倒しながらも、終盤に中島翔哉の一発で1–0というスコアにとどまりました。
数字の上では日本が主導権を握っていたものの、スコアは最後まで拮抗しており、「引いて守るボリビアをどう崩すか」が大きなテーマとなった試合でもあります。
今回の一戦でも、評価の軸となるのは単なる勝敗ではなく、「どれだけ主導権を握る時間を増やせるか」「どれだけチャンスを創出し、失点リスクを抑えられるか」といった内容面の差になるはずです。
W杯本大会で多くの経験を積んできた日本が、格下とされる相手に対して、スコアと内容の両面で明確な差を示せるか。それを確認するうえで、ボリビア戦は格好のテストになります。
まとめ:格下の姿に潜む危険な強さ ボリビア戦が問う日本の現在地
ボリビア代表は、W杯本大会でいまだ勝利がなく、唯一の得点とわずかな勝ち点だけを記録してきた実績最下層の国です。
それでも1990年代には南米予選でブラジルを下して自力出場を果たし、今回の2026年サイクルでも再びブラジルを破ってプレーオフへと食い込んできました。
FIFAランキングでは中〜下位の位置づけにすぎませんが、南米予選という過酷な舞台でしぶとく生き残る姿には、侮れないリアルさがあります。
日本にとっては数字で大きく上回る相手であっても、守備の堅さや一発への集中力といった南米的なやりづらさを意識せざるを得ません。
だからこそこの試合は、単なる勝敗だけでなく、内容面の完成度を問う試合として、日本代表の現在地を測る意味を持つ一戦になるはずです。
