箱根駅伝という日本人学生が主役の大会の中で、外国人ランナー(留学生)の存在は毎年少人数ながら強い印象を残しています。
2026年大会でも登録されたのは9名のみですが、どの大学が起用し、どんな役割を担っているのかを見ていくと、単なる「速い助っ人」では語れない背景が見えてきます。
なぜ特定の大学に集中するのか、なぜ全員が同じ国籍なのか、そして「外国人は何人まで走れるのか」という疑問も、意外と正確には理解されていません。
ルールを知ることで、留学生の起用は無制限でもなく、各校の戦略が色濃く表れる選択肢の一つだと分かります。
実際の一覧を整理しながら大学ごとの考え方を比べると、優勝争い、シード争い、本戦定着といった立ち位置の違いまで浮かび上がってきます。
ここからの先では、2026年大会に出場する外国人ランナー9名を軸に、所属大学、起用ルール、そして箱根駅伝全体の構図を、流れに沿って丁寧にひも解いていきます。


2026年 箱根駅伝の外国人ランナー一覧!留学生への疑問をまるっと解決!

2026年の箱根駅伝には、全21チーム中に創価大学や山梨学院大学など6校から計9名の外国籍ランナーが登録されており、日本人中心の大会で際立つ少数精鋭の存在です。
ここでは、その9名を大学別・学年別に並べて整理し、各校がどの世代の留学生を戦力として起用しているのかを見ていきます。
- 2026年登録の留学生ランナー9名と所属大学一覧
- なぜ全ての留学生がケニア人なのか?
- 外国籍と留学生の違いとは?
- 箱根駅伝本番の留学生の起用ルール
- 関東学生連合に留学生は入れるのか?
- 出場回数や出場資格のルール
2026年登録の留学生ランナー9名と所属大学一覧
2026年の留学生ランナーは、ごく一部の大学が少人数で受け入れており、1校あたり多くても2人までにとどまっています。
この限られた枠の使い方には各大学で違いがあり、戦力補強に重点を置くチームもあれば、日本人選手の積み上げを優先する編成も見られます。
実際に留学生が配置されるのは、区間の要所や総合順位に影響しやすいポジションが多く、チーム方針が最も反映される存在と言えるでしょう。
今回登録された9名はいずれもケニア出身で、長距離に強い実績校から日本の大学へと進んだ選手が中心です。
下の一覧表では、大学ごとの配置と学年構成をひと目で確認できます。
| 大学名 | 選手名 | 学年 | 国籍 | 出場回数 (箱根駅伝) |
|---|---|---|---|---|
| 城西大学 | ヴィクター・キムタイ | 4年 | ケニア | 3回 |
| 大東文化大学 | エヴァンス・キプロップ | 2年 | ケニア | 0回 |
| 日本大学 | シャドラック・キップケメイ | 3年 | ケニア | 2回 |
| 山梨学院大学 | ジェームス・ムトゥク | 4年 | ケニア | 1回 |
| ブライアン・キピエゴ | 3年 | ケニア | 1回 | |
| 創価大学 | スティーブン・ムチーニ | 3年 | ケニア | 2回 |
| ソロモン・ムトゥク | 2年 | ケニア | 0回 | |
| 東京国際大学 | アモス・ベット | 3年 | ケニア | 0回 |
| リチャード・エティーリ | 3年 | ケニア | 1回 |
なぜ全ての留学生がケニア人なのか?
2026年大会に登録された留学生ランナーが全員ケニア出身という点に驚く人もいますが、背景には長距離界で築かれたケニアの圧倒的な実績があります。
大学駅伝でも、ケニア人留学生が主要区間で区間賞や区間新を次々と記録し、チームを押し上げる存在として強い信頼が根付いています。
標高の高いケニアでは、子どもの頃から走る習慣に加え、薄い空気の中で自然と心肺機能や持久力が鍛えられます。
さらに、細身で脚の長い体型やスピードを維持しやすいフォームなど、日本から見て理想的な身体的特性も多く備えています。
こうした選手が育つ高地地域と、日本の高校・大学・実業団は長年にわたり、コーチや仲介者を通じたスカウトの関係を築いてきました。
このような中で一部の大学では、限られた出走枠を、実績があり信頼も厚いケニア出身選手に託す傾向を強めています。
その積み重ねが、箱根駅伝における「留学生=ケニア出身」という構図を自然なものにしてきたのです。
外国籍と留学生の違いとは?
箱根駅伝で語られる「外国籍ランナー」とは、日本国籍を持たないすべての選手を指し、「留学生ランナー」はその中でも海外から日本の大学に進学してきた選手だけを意味します。
つまり、留学生ランナーは外国籍ランナーに含まれますが、すべての外国籍選手が留学生とは限らないという関係になります。
ケニアで育ち、日本の大学に進学したような選手は、外国籍かつ留学生に該当する代表的なケースです。
一方で、幼い頃から日本で暮らし、日本の学校で教育を受けてきた外国籍の選手は、国籍は違っても永住者や定住者として留学生とは別に扱われます。
この違いにより、同じ外国籍でもある選手は留学生枠を使う一方で、別の選手は日本人選手と同じ枠で起用できるという差が生まれます。
「外国人は何人まで出られるのか?」といった話題で混乱が生じやすいのは、この留学生枠を指して語られることが多いためです。
こうした仕組みを理解しておくと、外国籍ランナーに関する人数のカウントや制限への疑問も自然と整理できます。
箱根駅伝本番の留学生の起用ルール
箱根駅伝では、外国人留学生の「チームへの登録人数」と「実際に出場できる人数」が分けて定められています。
各大学は16人のエントリーメンバーの中に、最大2人までの留学生を登録できますが、本番で走れるのはそのうち1人だけです。
また、1人の選手が複数の区間を走ることは認められていないため、「1校あたり留学生1人が1区間のみ」という前提で起用を考える必要があります。
この制限は、留学生の影響が過度に大きくならないようにする一方で、「どの区間にその1人を使うか」という戦略性を各大学に求めるものです。
指導者は、日本人選手の層やチーム方針を踏まえたうえで、往路で流れをつくるのか、復路で巻き返すのかといった起用の形を選びます。
ただし、登録されていてもコンディションやチーム事情によっては出走を見送る判断もあり、必ず出場するとは限りません。
観戦する側も、「各校が限られた1人の留学生をどの区間に配置したか」を意識しておくと、オーダー発表や展開の意図がより読み取りやすくなります。
関東学生連合に留学生は入れるのか?
関東学生連合は、本戦に出場できなかった大学の中から選手を集めて編成される、唯一の混成チームです。
メンバーは、予選会で11〜20位だった大学からの「チーム枠」と、21位以下の大学から個人成績上位を拾う「その他個人枠」を合わせて16人が選ばれます。
この際、外国人留学生は最初から選考対象外となっており、関東学生連合に留学生が加わることはありません。
この特別チームの目的は、本戦に届かなかった日本人学生にも出場の機会を与え、多くの大学から選手が箱根を経験できるようにすることにあります。
もし留学生も含めてしまうと、力のある外国籍選手が中心を占めやすくなり、限られた16人の枠を日本人学生と奪い合う形になってしまいます。
その結果、「より多くの大学から日本人選手にチャンスを広げる」という本来の役割が見えにくくなるため、留学生は自大学の本戦出場時に限り、専用の枠で起用される制度に分かれています。
「大学チームには留学生が在籍し得るが、関東学生連合は日本人学生のみで編成される」という前提を押さえると、21チーム全体の構図や外国人ランナーの位置づけがぐっと理解しやすくなります。
出場回数や出場資格のルール
箱根駅伝では、本大会と予選会を合わせた出場回数が通算4回までという共通ルールが、すべての選手に適用されています。
ここでの「出場」とは、実際にレースで走ったかどうかに関係なく、本大会や予選会にエントリーされた時点で1回とカウントされる点が特徴です。
そのため、補欠で出場せずに終わった年も回数に含まれ、選手とチームはこの4回という上限をどう配分するかを見据えて起用を計画します。
このルールは日本人選手と留学生選手の区別なく一律で適用され、「誰に経験を積ませるか」「どの学年から出場させるか」といった判断にも影響します。
加えて、箱根駅伝に出場するには、関東学生陸上競技連盟に加盟する大学に所属し、その年度に男子登録選手として登録されていることが前提となります。
さらに、大学側・競技者本人のいずれもが連盟から処分を受けていないことが求められ、規律違反が処分に至った場合は、その時点で出場資格を失います。
こうした出場回数や登録要件のもとで、限られたチャンスをどの世代にどう配分するかが問われ、箱根駅伝は一戦ごとの重みを強く感じさせる舞台になっているのです。
2026年 箱根駅伝の外国人ランナーの影響力とは?留学生を起用する大学の傾向

留学生ランナーの強みは単に「速い」ことにとどまらず、ハーフ自己ベストの水準や起用されやすい区間に加え、毎年ケニア出身選手を継続的に採用して戦力の底上げを図る大学の傾向にも表れています。
ここからは、比較条件をそろえたデータと過去の推移をもとに、そうした留学生起用がレース展開にどのような影響を与えているのかを具体的に整理していきます。
- 59分台が際立つ 留学生ハーフ自己ベスト5
- 日本人エースが刻むハーフ自己ベスト5
- 留学生ランナーの区間との相性
- 過去5年の留学生起用校を比較!常連校はどこ?
- 勝つために留学生の起用はずるい?
- 留学生のその後
59分台が際立つ 留学生ハーフ自己ベスト5
留学生ランナーのハーフマラソン自己ベストを並べて見ると、この5人が大会全体でも群を抜くスピードを持っている層だと分かります。
1位の59分30秒から5位の1時間00分30秒までがわずか1分差に収まり、1kmあたり約2分50秒という極めて高い巡航ペースで21kmを走り切る計算になります。
全員が3〜4年生・21〜25歳の年齢層にあり、持久力と経験のバランスがもっとも整いやすい時期にあたるため、チームの中核としても計算しやすい存在です。
特に59分台を持つ東京国際大学と日本大学の2選手は、スピードレースで主導権を握る力があり、他校のオーダー構成や展開予測に影響を与える可能性もあります。
この5人の走力を次のパートで解説する日本人エース級の自己ベストと照らし合わせることで、今大会全体の「スピード感」がどの水準に置かれそうかを具体的にイメージしやすくなります。
| 順位 | 大学名 | 選手名 | 学年 | 年齢 | ハーフ記録 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 東京国際大学 | リチャード・エティーリ | 3年 | 22 | 59分30秒 |
| 2位 | 日本大学 | シャドラック・キップケメイ | 3年 | 22 | 59分49秒 |
| 3位 | 東京国際大学 | アモス・ベット | 3年 | 25 | 1時間00分11秒 |
| 4位 | 山梨学院大学 | ブライアン・キピエゴ | 3年 | 21 | 1時間00分16秒 |
| 5位 | 山梨学院大学 | ジェームス・ムトゥク | 4年 | 23 | 1時間00分30秒 |
日本人エースが刻むハーフ自己ベスト5
留学生が59分台を含むハイレベルな記録を持つ一方で、日本人エース格の選手たちは1時間00分台前半に集まり、突出した速さよりも厚みのある層の広がりが目立ちます。
この違いは単なる能力差ではなく、留学生が「レースの流れを動かす役割」、日本人エースが「その展開を受け止めて崩さない役割」を担っていると見ると分かりやすくなります。
日本人上位選手たちは区間適性やチーム内の役割によって評価が変わりやすく、ハーフ自己ベストは“突出した速さ”というより“計算可能な安定性”を示す指標として機能します。
そのため、留学生の爆発力を起点に、日本人の中核を担う選手たちがどこで受け、どこで粘るかがオーダー設計の焦点となり、同じ1時間00分台でも果たす役割には差が生まれます。
留学生の記録と日本人トップ層の水準を並べて見ることで、2026年大会が「個の速さで引き上げる展開」なのか、「厚い層で削り合う展開」なのか、そのレース構図が立体的に浮かび上がります。
| 順位 | 大学名 | 選手名 | 学年 | 年齢 | ハーフ記録 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 早稲田大学 | 工藤 慎作 | 3年 | 21 | 1時間00分06秒 |
| 2位 | 立教大学 | 馬場 賢人 | 4年 | 22 | 1時間00分26秒 |
| 3位 | 國學院大學 | 上原 琉翔 | 4年 | 22 | 1時間00分30秒 |
| 4位 | 駒澤大学 | 帰山 侑大 | 4年 | 22 | 1時間00分32秒 |
| 5位タイ | 國學院大學 | 青木 瑠郁 | 4年 | 21 | 1時間00分45秒 |
| 5位タイ | 中央大学 | 吉中 祐太 | 4年 | 22 | 1時間00分45秒 |
| 5位タイ | 中央学院大学 | 近田 陽路 | 4年 | 22 | 1時間00分45秒 |
留学生ランナーの区間との相性
留学生ランナーが起用される区間は、山か平地か、往路か復路かによって役割の性格が大きく変わります。
多くの大学では、持ち味であるスピードを最大限に生かせる平地区間に留学生を配置する傾向が強く見られます。
特に序盤や復路の20km前後の平坦な区間では、ハイペースを維持したまま集団を引き離す力が、そのまま総合順位に反映されやすくなります。
一方、5区・6区の山登りや山下りは、日本特有のコース要素が色濃く、長い勾配への対応力や下りの技術、気象条件への順応が求められるため、「山のスペシャリスト」として日本人選手を育てて任せる大学が目立ちます。
その結果、留学生は急な勾配や技術的対応よりも、高い巡航ペースを安定して発揮できる走力を評価されやすく、区間特性に応じた戦力として位置づけられていきます。
往路ではレースの主導権を握る役割として、復路では逆転やシード争いの局面で流れを変える存在として起用されるなど、その使われ方は大学ごとに少しずつ異なります。
こうした判断は単なる持ちタイムの比較ではなく、区間特性とチーム全体の戦略をどう組み合わせて効果を最大化するかという視点に基づいています。
過去5年の留学生起用校を比較!常連校はどこ?
直近5大会の箱根駅伝では、本戦にエントリーされた外国人留学生ランナーは毎年7〜10人前後で推移しており、全21チームの中でも限られた存在です。
その中で実際に留学生を登録した大学は9校あり、年ごとの人数や具体的な内訳については下の表に整理しています。
この表を見比べると、ほぼ毎年のように留学生を起用している大学と、特定の年だけ限定的に登録している大学とに分かれる傾向が見えてきます。
前者は、シード争いではなく本戦出場圏の安定確保を目的に、留学生を戦力の底上げとして毎年計画的に起用している点が特徴です。
一方後者は、日本人選手を中心に据えたうえで、手薄になりがちな区間を補うピンポイント起用が目立ち、編成上の“保険”として活用されることが多くなっています。
また、優勝争いの常連校は留学生に頼らない一方で、シード権争いや戦力の底上げを図る大学ほど、外国人留学生を重要な戦力として起用する傾向があります。
こうした9校の起用傾向を押さえておくことで、「どの層の大学が留学生に依存しやすいのか」という全体像が、過去5年の数字から立体的に浮かび上がってきます。
| 大学名 | 第98回(2022) | 第99回(2023) | 第100回(2024) | 第101回(2025) | 第102回(2026) | 5大会合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 山梨学院大 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 9 |
| 東京国際大 | 2 | 2 | 0 | 2 | 2 | 8 |
| 創価大 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 7 |
| 城西大 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 |
| 大東文化大 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 |
| 国士舘大 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 3 |
| 駿河台大 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 |
| 日本大 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 3 |
| 専修大 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
勝つために留学生の起用はずるい?
箱根駅伝では、「勝つために留学生ランナーを使うのはずるいのではないか」という声が、たびたび上がります。
こうした声に触れたとき、大会側が留学生の起用を完全に禁止していない理由を知ると、このテーマの見え方も少し変わってきます。
競技の公平性の観点では、極端に実力の高い留学生が複数出走すると、日本人学生同士の力関係が見えにくくなるため、「登録人数」と「出走人数」に制限を設けてバランスを取っています。
一方で、大学スポーツには学びや国際交流の意義もあり、日本で学びながら競技に取り組む留学生を、多様性や人材育成の観点から前向きに評価する声も現場には根強くあります。
そのため現在のルールは、留学生を完全に排除するのではなく、枠を絞りつつ「国際性」と「日本人学生の出場機会」の両立をめざす折衷的な形になっています。
日本人選手にとっては、留学生と日々競い合うことが刺激になる一方、予選会や本戦の出場に直接関わる難しさも確かに存在します。
だからこそ、「留学生がいる大学=ずるい」と決めつけるのではなく、ルールや運用の中で、留学生と日本人選手がどのように共存して走っているのかを捉える視点が求められます。
留学生のその後
箱根駅伝を走った留学生ランナーの進路は、日本の実業団チームで競技を続ける道、本国や他国でプロやナショナルチームに進む道、そして競技から離れて就職する道の3つに大きく分かれます。
実業団に進んだ場合は、日本企業の陸上部に所属し、社員として働きながら練習と業務を両立し、全国駅伝やマラソンに出場するのが一般的な形です。
一方で、大学卒業後に帰国し、母国のナショナルチームで活躍したり、コーチとして若手選手の育成に携わるなど、日本での経験を本国の競技発展に生かすケースも見られます。
最近では、高校や実業団で日本に滞在していた選手が大学に進学し、その後も国内外で競技を続けるパターンも増えており、日本と母国を行き来しながらキャリアを築く動きも一定数見られます。
競技引退後は、通訳やスポーツ関連のビジネス、企業での一般就労に進む人もおり、その際は在留資格の切り替え、語学力、学位の有無などが進路選択に大きく影響します。
実際、どこで競技を続けるか、どの国で生活基盤を築くかは、記録や実績だけでなく、家族や将来設計、収入面といった現実的な要素と密接に結びついています。
箱根駅伝で見せた走りはキャリアの一場面にすぎず、その後の人生で何を選び、どこに“第二のスタートライン”を引くかを模索していくプロセスこそが、留学生ランナーのもう一つの物語なのです。
まとめ:箱根駅伝の留学生ルールを総整理
記事のポイントをまとめます
