青山学院大学が箱根駅伝でどれほどの力を発揮してきたのか?
歴代順位を一度きちんと整理しておきたいと思う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、青学の過去の成績を一覧で振り返りつつ、原晋監督の就任以降にチームがどのように進化していったかを読み解きます。
単なる成績だけでなく、初優勝や連覇、大会新記録が生まれた背景にも注目しながら見ていきます。
さらに、黒田朝日選手や神野大地選手の走り、ライバルとなる駒澤大学などとの比較から、青学の特長も明らかにします。
数字としての順位だけでなく、強さの裏にある育成やチーム作りの方針に目を向けることで、立体的な理解が得られるはずです。
また、直近3大会の流れを押さえておくと、2026年の箱根駅伝をより深く楽しめるようになります。
青山学院の箱根駅伝の歩みを、成績・選手・戦術の3つの視点からじっくり振り返っていきましょう。
青山学院の箱根駅伝・歴代順位を一覧で振り返る

青山学院大学が箱根駅伝で積み上げてきた歴代順位を整理しておくことで、チームのこれまでの歩みや現在の位置づけがより見えてきます。
ここでは、初出場から第101回大会までの主な成績を時系列でまとめ、あとで触れる「強さの理由」と分けながら、まずは順位の流れを丁寧に確認していきます。
初出場から現在までの順位
青山学院大学は第22回大会(1943年)で箱根駅伝に初出場し、11校中11位という成績でスタートを切りました。
その後は長く本戦から離れましたが、第41回大会(1965年)で復帰し、第52回大会(1976年)まで12大会連続でタスキをつなぎます。
この期間は主に中位から下位の成績が続きましたが、
- 第44回大会:7位
- 第45回大会:9位
と、一桁順位に入る健闘も見られました。
ただし、第52回大会では復路途中で棄権となり、再び本戦から遠ざかる時期に入ります。
33年ぶりに出場した第85回大会(2009年)では総合22位ながら、全区間でタスキをつないだことが大きな一歩になりました。
続く第86回大会では総合8位と飛躍し、その後は上位から中位を行き来しながら、安定したチームへと成長していきます。
第90回大会(2014年)では総合5位に入り過去最高に並び、第91回大会(2015年)でついに総合初優勝を果たしました。
第101回大会(2025年)終了時点では総合優勝8回を数え、長い準備期間を経て一気に開花したチームであることが歴代の順位から見て取れます。
以下に、箱根駅伝における青山学院大学の歴代順位をまとめました。
| 大会回 | 開催年 | 総合順位 | 総合記録 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 第22回 | 1943年 | 11位 | 16時間41分59秒 | 初出場 |
| 第41回 | 1965年 | 14位 | 13時間07分25秒 | |
| 第42回 | 1966年 | 13位 | 12時間32分26秒 | |
| 第43回 | 1967年 | 14位 | 12時間39分52秒 | |
| 第44回 | 1968年 | 7位 | 12時間02分01秒 | |
| 第45回 | 1969年 | 9位 | 12時間01分11秒 | |
| 第46回 | 1970年 | 12位 | 12時間26分32秒 | |
| 第47回 | 1971年 | 12位 | 12時間26分23秒 | |
| 第48回 | 1972年 | 13位 | 12時間32分43秒 | |
| 第49回 | 1973年 | 13位 | 13時間02分43秒 | |
| 第50回 | 1974年 | 14位 | 12時間49分13秒 | |
| 第51回 | 1975年 | 14位 | 12時間33分29秒 | |
| 第52回 | 1976年 | 途中棄権 | ― | 復路途中棄権 |
| 第85回 | 2009年 | 22位 | 11時間29分00秒 | 33年ぶり本戦復帰 |
| 第86回 | 2010年 | 8位 | 11時間21分25秒 | 41年ぶりシード |
| 第87回 | 2011年 | 9位 | 11時間13分20秒 | |
| 第88回 | 2012年 | 5位 | 11時間08分46秒 | |
| 第89回 | 2013年 | 8位 | 11時間25分59秒 | |
| 第90回 | 2014年 | 5位 | 11時間08分53秒 | 当時の過去最高タイ |
| 第91回 | 2015年 | 1位 | 10時間49分27秒 | 総合優勝(大会新) |
| 第92回 | 2016年 | 1位 | 10時間53分25秒 | 総合優勝 |
| 第93回 | 2017年 | 1位 | 11時間04分10秒 | 総合優勝 |
| 第94回 | 2018年 | 1位 | 10時間57分39秒 | 総合優勝 |
| 第95回 | 2019年 | 2位 | 10時間55分50秒 | 準優勝 |
| 第96回 | 2020年 | 1位 | 10時間45分23秒 | 総合優勝(大会新) |
| 第97回 | 2021年 | 4位 | 11時間01分16秒 | |
| 第98回 | 2022年 | 1位 | 10時間43分42秒 | 総合優勝(大会新) |
| 第99回 | 2023年 | 3位 | 10時間54分25秒 | |
| 第100回 | 2024年 | 1位 | 10時間41分25秒 | 総合優勝(大会新) |
| 第101回 | 2025年 | 1位 | 10時間41分19秒 | 総合優勝(大会新) |
※なお記載のない年(=該当大会回)は青山学院大学が箱根駅伝本戦に不出場だった年となります。
シード権獲得と出場回数の変化で見える成長
箱根駅伝におけるシード権は、総合10位以内に入った大学に与えられ、翌年の本戦出場が自動的に保証される仕組みです。
シードは予選会の免除という大きな利点があるため、安定して戦う上で重要な指標になります。
青山学院大学は第52回大会を最後にしばらく本戦から遠ざかっていたため、長いあいだシード争いとは無縁の状況が続いていました。
流れが変わったのは第85回大会(2009年)で本戦に復帰し、翌年の第86回大会(2010年)で総合8位に入り、実に41年ぶりにシード権を獲得しました。
この年を境に、青学は「毎年出場するチーム」へと立場を変えていきます。
- 2025年12月時点の出場回数は30回
- うちシード出場が17回
以上のように、近年はすっかりシード常連校という印象が定着しています。
さらに第100回・第101回大会での連覇によって、今では「出場すれば優勝候補」と見なされるまでに成長しました。
出場回数そのものでは中央大学や日本大学といった古豪には及びませんが、シード権の推移を見れば、この十数年で新しい強豪校へと一気に変貌を遂げたことがよく分かります。
初優勝から大会新記録までの主要ハイライト
青山学院大学が箱根駅伝で初優勝を果たしたのは第91回大会(2015年)で、前年に記録した過去最高の5位から一気に頂点へと駆け上がり、駅伝界の勢力図に大きな変化を与えました。
その後のシーズンでは、記憶に残るレースが次々と続いていきます。
- 第92回大会:全区間で首位を守り切る完全優勝で連覇
- 第93回大会:出雲・全日本と合わせて大学駅伝三冠を達成
- 第94回大会:4連覇を達成し黄金期を形成
さらに第96回大会(2020年)、第98回大会(2022年)でも優勝を重ね、「毎年優勝を狙うチーム」としての評価が定着しました。
記念大会となった第100回大会(2024年)では、往路・復路ともに制して総合記録を更新。翌年の第101回大会(2025年)では、その記録を自ら塗り替える形で再び総合優勝を飾ります。
これらの大会を振り返るだけでも、青山学院が駅伝界でいかに特別な存在になったかがよく分かります。
原晋監督就任で変わった青山学院の強豪への歩み

青山学院大学は長い歴史を持ちながらも、箱根駅伝では「出場はしていても上位常連とは言いづらい」という立場に長くとどまっていました。
その流れに変化をもたらしたのが、社会人経験を経て指導にあたった原晋監督の就任です。組織づくりや育成の方針が大きく見直され、チームは新たな方向へと進み始めました。
ここでは、その転換点となった歩みを順を追って整理していきます。
原監督が導入した組織改革と育成方針
原晋監督は中国電力で陸上長距離の実業団チームでの経験に加え、約10年間のビジネスキャリアを経て、2004年に青山学院大学陸上競技部の監督に就任しました。
当時のチームには専用グラウンドがなく、雰囲気も「体育会の強化部」というよりは、どこかサークルに近いものがあり、組織としての土台が整っていない状態でした。
原監督はまず、強化指定部としての体制づくりに着手し、練習内容だけでなく生活・規律・寮の運営に至るまで、チーム全体の仕組みを整えていきます。
この改革の具体的な内容は、以下の通りです。
- 目標管理シート・目標管理ミーティングを導入
- 選手が目標・課題を言語化し共有する文化を構築
- 学年ごとに成長ステップを明確化(例:2年で復路、3年で往路、4年でエース区間)
- スカウトでは「タイム」だけでなく“心根の良さ”やチーム適性を重視
- 組織全体を「成長する集団」として再構築
こうした方針により、青学は「速い選手を集めるチーム」から、「目的と役割を共有して成長するチーム」へと生まれ変わっていきました。
予選会突破からシード常連校になるまで
2004年に原晋監督が就任したものの、すぐに成果が出たわけではなく、掲げていた「3年で箱根復帰」という目標も達成には至りませんでした。
一時は廃部の可能性まで取り沙汰される状況でしたが、強化方針をぶらさずに取り組み続け、2008年度の予選会でついに本戦出場の切符をつかみます。
そこからの流れを整理すると、以下のようになります。
- 2009年(第85回):33年ぶりの本戦出場。総合22位ながら完走経験は大きな収穫に
- 2010年(第86回):総合8位で、41年ぶりとなるシード権を獲得
- 2011年以降:シード権獲得を重ね、2010年代前半には「優勝候補の一角」として注目される存在に
この時期はまだ優勝経験こそないものの、
「予選会常連 → 本戦常連 → シード常連」
へと段階を踏んだ成長が、改革の手応えを示す結果となりました。
こうした積み重ねがあったからこそ、のちに続く初優勝と黄金期につながり、青山学院は新しい強豪校としての評価を確かなものにしていきます。
青山学院の箱根駅伝・優勝シーズンを時系列で振り返る

青山学院の飛躍を語るうえで、2015年の初優勝から始まる連覇の歩みは欠かせない要素です。
ここでは、初制覇からの4連覇、そして2020年以降の記録更新が続いた各優勝シーズンの流れを時系列で整理し、現在の強さへとつながる変化を振り返ります。
第91回(2015年)の初優勝とレース展開
2015年の第91回大会は、青山学院が初めて総合優勝を果たした転機となる大会でした。
往路・復路ともに首位を守り切る完全優勝を達成し、駅伝界での存在感が一気に高まった印象的なシーズンです。
総合タイム10時間49分27秒は、それまでの大会記録を大きく塗り替え、新しい時代の到来を印象づけました。
特に5区では神野大地選手が区間賞を獲得し、三代目山の神と称される象徴的なシーンが生まれます。
当日の流れを整理すると次の通りです。
- 序盤から上位をキープし安定した走り
- 5区で神野選手が区間賞を獲得し差を拡大
- 復路でも主導権を渡さず危なげなく逃げ切り
- 初優勝が後の連覇と長期的な強さの土台に
この大会の勝利は、それまで優勝争いに絡むことが少なかった青学の評価を大きく変え、後の快進撃の出発点となりました。
4連覇(2015〜2018年)に見られた総合力とチームの成熟
2015年から2018年にかけて達成した4連覇は、箱根駅伝の勢力図に大きな変化をもたらしました。
特に最初の2大会で“完全優勝”を続けたことで、青学の強さが一時的なものではなく、継続性のあるものだと広く認識されるようになります。
それぞれの大会の特徴を整理すると、以下の通りです。
- 第92回大会:2年連続の完全優勝で、初優勝の再現性を証明
- 第93回大会:往路・復路・総合すべてを制し、大学駅伝三冠を達成
- 第94回大会:往路は東洋大学が先行するも、復路で逆転して連覇を継続
この4年間では、特定のエースに依存せず、複数区間で上位を取れる総合力が際立っていました。
また、毎年掲げられるスローガンやチーム全体の明るい雰囲気がテレビ中継を通して伝わり、ファン層の広がりにもつながっていきます。
こうした積み重ねが、「箱根といえば青学」というイメージを定着させ、後に続く記録更新の時代を支える土台となりました。
2020年以降の記録更新と総合8勝の意味
4連覇のあと一度は王座を譲った青山学院でしたが、第96回大会(2020年)で大会新記録となる10時間45分23秒をマークし、再び頂点に返り咲きました。
史上最速とも評されたこの勝利は、時代の変化に適応する力を備えていることを強く印象づけるものでした。
以降の優勝シーズンは次の通りです。
- 第98回大会(2022年):10時間43分42秒で再び大会記録を更新
- 第100回大会(2024年):10時間41分25秒で通算7度目の優勝
- 第101回大会(2025年):10時間41分19秒で8回目の総合優勝。2年連続の記録更新
2015年以降の11大会で8度の総合優勝を果たしたこの実績は、戦前から続く伝統校と比べても際立つ勝率です。
特徴をまとめると、以下の点が挙げられます。
- 記録更新が続く「高速化」時代にしっかり適応
- 上位を安定して維持できる選手層の厚み
- 優勝のたびに記録を更新していく成長力
- 近年でも主役であり続ける存在感
これらの流れによって、青山学院は一時的な盛り上がりではなく、現代箱根を象徴する強豪として確かな地位を築いています。
青山学院の箱根駅伝を彩った主要選手と名シーンを紹介

青山学院の箱根駅伝を振り返るうえで欠かせないのが、印象に残る選手たちの走りや大会を盛り上げた名シーンの数々です。
なかでも「山の神」こと神野大地選手を筆頭に、黄金世代の活躍や近年のエースたちの力走は、青学らしさを象徴する存在として今も語り継がれています。
ここでは、世代ごとの印象深い走りを取り上げながら、青学が築いてきた魅力と強さの歩みを整理していきます。
「山の神」神野大地ら、山上り区間の印象的な走り
神野大地選手は第91回箱根駅伝の5区で当時の区間新記録を叩き出し、「三代目山の神」と称されるほどの圧巻の走りを見せました。
小柄な体格ながらも力強いストライドで一気に坂を攻め、青学が初優勝に向けて一気に流れを引き寄せた場面として、多くのファンの記憶に残っています。
翌年の第92回大会でも堅実な走りでリードを守り、完全優勝へとつながる展開を演出しました。
青学は山上りだけでなく、山下りの6区でも小野田勇次選手らが好走を重ね、「山で主導権を握るチーム」という評価を築いていきます。
名シーンとして語られるポイントを整理すると、次のようになります。
- 山上り区間での大胆な攻めと記録更新
- 6区でも安定感のある走りでリードを広げる
- 山区間の強さが青学の戦い方を形づくってきた
一方で、先頭が高速で進む展開の年には、後続チームが中継所に間に合わずタスキを渡せない「無念の繰り上げスタート」が起きる場面もあります。
2016年の神奈川大学のように、数秒届かず白いタスキをかけて走り出す選手の姿は、勝者の歓喜とは対照的な切なさを感じさせるシーンとして語られます。
こうした歓喜と落胆の積み重ねが、箱根駅伝を特別な舞台にしているのかもしれません。

久保田和真・一色恭志ら黄金世代の活躍
第92回大会で1区を務めた久保田和真選手は、歴代でも上位に入る好タイムで区間賞を獲得し、レースの流れを一気に引き寄せました。
その活躍が評価され、「金栗四三杯」の受賞にもつながっています。
続く2区では一色恭志選手が2年生ながらエース区間を任され、以降3年連続で同区を担当。毎年安定して上位を維持し、チームに大きな安心感をもたらしました。
この「黄金世代」の特徴を整理すると、次のようになります。
- 久保田選手が初動から流れをつくる力走を見せた
- 一色選手がエース区間でリードを堅実に守り続けた
- 秋山雄飛、小椋裕介、下田裕太ら実力派がそろい、盤石の総合力を形成
この世代がもたらした「どの区間でも崩れない強さ」は、青山学院が長く優勝争いの中心に立ち続けることになった背景を示しています。
黒田朝日など近年のエースとチームのカラー
近年の青山学院を象徴する存在といえるのが、花の2区で活躍を続ける黒田朝日選手です。
第100回大会では区間賞を獲得して勢いをもたらし、第101回大会では区間新記録を樹立するなど、駅伝でその強さを際立たせています。
出雲駅伝や全日本大学駅伝でも着実に記録を重ね、「スピードと粘り」を兼ね備えた青学らしい走りを体現する選手として注目を集めています。
ここ数年のチームの特徴を整理すると、次のようになります。
- 黒田選手がスピードと長距離適性を高次元で両立
- 太田蒼生選手・若林宏樹選手らが記録を更新し、層の厚さが際立つ
- チーム全体がハイレベル化し、現在も記録を更新し続けている
こうした新世代の活躍により、青学はもはや「全盛期のチーム」という過去の枠にとどまらず、今なお進化を続ける存在として強さを発揮し続けています。
歴代順位で見る青山学院と他強豪校との比較

青山学院大学の強さを考えるうえでは、歴史ある他の強豪校と比べてどのような位置づけにあるのかを、数字で確認しておくことが大切です。
ここでは優勝回数や出場回数といったランキングをもとに、青学が箱根駅伝の中でどんな立ち位置にあるのかを整理していきます。
優勝回数・出場回数から見た歴代ポジション
箱根駅伝の歴代優勝回数では、中央大学14回、早稲田大学13回、日本大学12回、順天堂大学11回、日本体育大学10回が上位に並び、続くグループに青山学院大学と駒澤大学が8回で肩を並べています。
この数字から見ても、青学は最多優勝校ではないものの、伝統校に次ぐ「第2グループの中心的存在」として確かな地位を築いていることが分かります。
一方で、出場回数は第101回大会時点で30回と、90回以上の出場歴を持つ早稲田大学や中央大学と比べると大きな開きがあります。
それでも8度の総合優勝に到達している点は、限られた出場回数の中で成果を効率よく積み重ねてきた現代型の強豪であることを物語っています。
青学の特徴を整理すると、以下の通りです。
- 出場回数は少ないが、優勝効率が極めて高い
- 直近10大会で7勝という圧巻の成績を記録
- 第101回大会では大会新記録を更新
こうした実績を見ると、歴史全体では伝統校を追う立場でありながら、近年の成績に限れば主役級の存在感を放っていることがよく分かります。
近年の勢力図で浮かび上がる他校との違い
近年の箱根駅伝における優勝争いは、青山学院大学と駒澤大学の二強体制が軸となっており、第97回から第101回の直近5大会では青学が3回、駒澤が2回の総合優勝を飾っています。
さらに駒澤大学は同期間に出雲駅伝と全日本大学駅伝も制して三冠を達成し、青学と互いに高め合うような関係が続いています。
東洋大学は総合優勝からやや間が空いていますが、山上り区間での強さから「山の東洋」と呼ばれ、勝負どころでの存在感は今も健在です。
早稲田大学は直近の優勝こそ2011年ですが、上位に食い込むシーズンも多く、総合力の高い伝統校として存在感を示し続けています。
各校の特徴を整理すると、以下のようになります。
- 青学:層の厚さと区間配置の巧さで総合力が高い
- 駒澤:トラックでの記録と駅伝での戦術力を兼ね備える
- 東洋:山上りでの強さが象徴的
- 早稲田:シード獲得の多い総合力型・名門校
青学は箱根駅伝に限らず、出雲駅伝・全日本大学駅伝でも複数回優勝を重ねており、年間を通して強さを発揮する勢力図の中心的存在と言えるでしょう。
黄金期の特徴と各大学のチームカラーの比較
黄金期に注目すると、中央大学や早稲田大学は戦前から戦後にかけて複数回のピークを経験し、長い年月をかけて強さを築いてきた伝統校です。
一方で、青山学院大学の黄金期は原晋監督の就任後に集中しており、2015年以降の約10年で8度の総合優勝を達成する密度の高い黄金期を築いています。
駒澤大学も2000年代以降に優勝を重ねており、歴史全体では伝統校には及ばないものの、平成後半から令和にかけて目覚ましい成果を上げてきました。
青学の黄金期は、こうした他校とは異なるアプローチから確立されており、楽しさと成果を両立する育成や戦略がその根底にあります。
伝統校が「長い歴史のなかで築いた黄金期」を持つのに対し、青学は「短期間で一気に頂点へ駆け上がる現代型の黄金期」を持つ点が大きな特徴です。
この違いを意識して見ることで、青山学院の歴代順位や優勝回数の意味がより立体的に浮かび上がってきます。
直近3大会の青山学院の戦い方と2026年の注目ポイント

第99回(2023年)から第101回(2025年)までの3大会を振り返ると、青山学院大学は一度王座から退いたものの、その後は連覇と大会新記録で再び頂点に返り咲く流れが続いています。
ここでは、この3年間の戦いぶりと現在のチーム状況を整理し、続くH3では第102回大会(2026年)以降に注目すべきポイントを確認していきます。
第99〜101回大会に見る勝ち方の変化
第99回箱根駅伝(2023年)では、青山学院大学は総合3位(10時間54分25秒)となり、駒澤大学が10時間47分11秒の大会新記録で優勝し、大学三冠を達成しました。
青学は往路3位・復路9位と、序盤から主導権を握れず苦しい展開が続いたのが特徴です。
翌年の第100回大会(2024年)では、「負けてたまるか大作戦」を掲げ、10時間41分25秒の大会新記録で2年ぶり7度目の総合優勝を飾ります。
往路中盤以降で徐々にリードを広げ、そのまま逃げ切る展開で安定感のある勝ち方が光りました。
第101回大会(2025年)では往路を制して流れをつかみ、総合タイム10時間41分19秒の大会新記録で2年連続・8度目の優勝を達成。
6区では野村昭夢選手が区間新記録を叩き出し、駒澤大学の追い上げを受けながらも主導権を終始維持し続けました。
3大会の戦い方を整理すると、以下のようになります。
- 第99回は追いかける展開が中心
- 第100回は先行してそのまま逃げ切る安定した勝ち方
- 第101回は山下りで差を広げ、総合力でリードを守り抜いた
この3年間の戦いを通して見ると、青山学院は「記録と内容の両面で完成度を高めた勝ち方」を築き上げてきたと言えるでしょう。
現在の青学が備える戦力と組織の特徴
今の青山学院大学を語るうえで欠かせないのが、原晋監督が長年にわたって築き上げてきた「青学メソッド」を軸とした自律型のチームづくりです。
選手が自らの言葉で意見を交わし、練習計画や振り返りを担う仕組みによって主体性が育まれ、組織としての強さにつながっています。
走力面では、5000mを13分台〜14分一桁台で走る選手が多く在籍しており、チーム全体のスピードレベルの底上げが進んでいます。
2025年度のチームテーマ「王者の挑戦 ~俺が青学を勝たせる~」にも、選手一人ひとりが勝利を“自分ごと”として引き受ける意識がはっきりと表れています。
青学の現在の特徴は、次の3点に集約されます。
- 自律性の高い選手育成:目標管理やミーティングを通じて主体的に動ける文化
- 選手層の厚さ:区間賞や区間新が出ても他区間が崩れず、全体で安定感を維持
- 短距離〜長距離までの幅広い育成:関東インカレや日本選手権でも活躍できる基礎力の高さ
こうした体制があるからこそ、体調不良や故障などのアクシデントにも柔軟に対応でき、近年の好成績へとつながっています。
第102回大会(2026)に向けて注目したい戦い方と焦点
第102回大会では、青山学院が3連覇や総合タイム10時間41分切りといった新記録にどこまで迫れるかが大きな注目ポイントとなります。
現時点でも青学は優勝候補の一角に位置づけられていますが、駒澤大学や中央大学といったライバル校も着実に力を伸ばしており、優勝争いの構図はさらに複雑さを増しています。
特に注目したいポイントは、次の4点です。
- 青学と駒澤の優勝争い:第101回大会でも駒澤が復路新記録で猛追
- 世代交代の進行:1〜3年生の活躍が目立つ中で、安定感を保てるか
- 原監督のチーム文化継承:次世代へのノウハウ共有が継続的な強さの鍵に
- レース運びの変化:序盤の流れ、山の配置、終盤の選手起用にどんな戦略が見られるか
こうした視点で大会を見ていくことで、単なる順位や結果にとどまらず、青山学院が次の時代に向けてどのように駅伝の戦い方を進化させていくのか、その過程まで立体的に捉えることができるでしょう。
まとめ:青山学院の箱根駅伝・歴代順位から読み解くポイントを総整理
記事のポイントをまとめます