ガーナ代表は、アフリカ予選グループを堂々の首位で駆け抜け、2026年W杯の出場権をつかみ取りました。
全10試合を戦い抜いた中で、勝点・得失点差ともに他を上回る結果を収めており、まさに内容と結果がしっかりリンクした予選でした。
なかでも決定的だったのが、2025年10月12日に行われた最終節・コモロ戦。モハメド・クドゥスがの決勝ゴールを決め、1–0で勝利。2位チームの結果に左右されず、自らの勝利で首位を確定させ、W杯出場を手中に収めました。
FIFAランキングは2025年10月時点で世界73位と高くはありませんが、実際には守備の引き締まり、切り替えのスピード、前線の推進力が高い次元で噛み合い、数字では見えない完成度の高い強さを発揮していました。
相手に与えるプレッシャーは、ランキング以上のインパクトです。
本記事では、まず予選全10試合の結果を一覧で整理。その中から特に印象深い3試合をピックアップし、戦術面から掘り下げていきます。
さらに注目選手たちの役割、日本代表が対ガーナ戦で押さえるべきポイントを明確にしながら、W杯本大会を見据えた“リアルな対策論”を提示していきます。


ガーナ代表が2026年W杯出場決定!首位通過でつかんだ出場条件とは?

ガーナ代表は、CAF予選グループIを10試合で勝点25・得失点差+17という堂々たる成績で首位通過しました。
ここでは、まず予選全体の数字を整理したうえで、W杯出場が確定した背景と流れをわかりやすく見ていきます。
ガーナの最終成績と順位から見るグループIの構造と通過ルール
ガーナの最終成績は、8勝1分1敗。勝点25を積み上げ、得失点差は+17という圧巻の数字でした。
グループIの最終順位は、1位ガーナ(25)、2位マダガスカル(19)、3位マリ(18)、4位コモロ(15)、5位中央アフリカ(8)、6位チャド(1)という並びです。
このアフリカ予選は、全9グループ制(A〜I)で構成されており、各グループの1位チームだけがW杯本大会への出場権を獲得します。
さらに、各グループ2位のうち成績上位4か国が、W杯出場の残り枠を懸けたプレーオフに進むという、極めて厳しい形式です。
グループIでは、2位に入ったマダガスカルがこの条件を満たせず、出場を果たしたのは首位通過を果たしたガーナただ一国となりました。
ガーナがW杯出場を確定させた最終節の条件
最終節・コモロ戦に向けたガーナの条件は、“引き分け以上で出場確定”という状況でした。
結果は1–0の勝利。舞台はホーム・アクラ。後半47分、モハメド・クドゥスの一撃がネットを揺らし、その瞬間に出場が決まりました。
同時刻の試合では、2位マダガスカルがマリに1–4で敗れており、もしガーナが引き分けていたとしても、出場条件は満たされていたことになります。
この白星によって、ガーナは自国史上5度目となるW杯出場を決め、アフリカ予選“突破組”の中でも確実な戦いぶりを示しました。
2026年W杯予選 ガーナ代表の全10試合の結果一覧

ガーナ代表が戦ったグループIの全10試合を、時系列で一覧にまとめました。
どのような流れで勝点を積み重ねていったのか、一つひとつの結果からその軌跡が見えてきます。
スコアは「ガーナ→相手国」の順で記載し、開催地は都市名で表記しています。
予選全体のバランスや戦い方を知るうえで、データから読み取れる“傾向”にも注目です。
| No | 日付 | 会場 (国) | 対戦相手 | スコア | 結果 | 得点者(ガーナ)/相手 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2023/ 11/17 | クマシ (ガーナ) | マダガスカル | 1–0 | 勝利 | 〈GHA〉I.ウィリアムズ90+6/— |
| 2 | 2023/ 11/21 | モロニ (コモロ) | コモロ | 0–1 | 敗戦 | —/〈COM〉マオリダ43 |
| 3 | 2024/ 06/06 | バマコ (マリ) | マリ | 2–1 | 勝利 | 〈GHA〉ヌアマ58、J.アイェウ90+4/〈MLI〉K.ドゥンビア45+1 |
| 4 | 2024/ 06/10 | クマシ (ガーナ) | 中央アフリカ | 4–3 | 勝利 | 〈GHA〉J.アイェウ6(P),60,69、I.ファタウ62/〈CTA〉マフタ11,41,90 |
| 5 | 2025/ 03/21 | アクラ (ガーナ) | チャド | 5–0 | 勝利 | 〈GHA〉セメニョ2、I.ウィリアムズ31、J.アイェウ36(P)、サリス56、ヌアマ68/— |
| No | 日付 | 会場 (国) | 対戦相手 | スコア | 結果 | 得点者(ガーナ)/相手 |
| 6 | 2025/ 03/24 | アンタナナリボ (マダガスカル) | マダガスカル | 3–0 | 勝利 | 〈GHA〉T.パーテイ11,53、M.クドゥス58/— |
| 7 | 2025/ 09/04 | アンタナナリボ (マダガスカル) | チャド | 1–1 | 引分 | 〈GHA〉J.アイェウ17/〈CHA〉Ecua89 |
| 8 | 2025/ 09/08 | クマシ (ガーナ) | マリ | 1–0 | 勝利 | 〈GHA〉ジク49/— |
| 9 | 2025/ 10/08 | キガリ (ルワンダ) | 中央アフリカ | 5–0 | 勝利 | 〈GHA〉サリス20、T.パーテイ52、ジク69、J.アイェウ71、K.スレマナ87/— |
| 10 | 2025/ 10/12 | アクラ (ガーナ) | コモロ | 1–0 | 勝利 | 〈GHA〉M.クドゥス47/— |
ガーナ代表の2026年W杯予選で印象を残した3試合を振り返る

ここからは、数字だけでは語れない「流れを変えた瞬間」に注目し、予選の中でも特に印象深い3試合を振り返ります。
スコアや得点経過、会場などの試合情報をもとに、それぞれの展開と戦術的なポイントを追っていきます。
第3節|敵地で逆転を呼び込んだ終盤の連動性
2024年6月6日、アフリカ予選I組の第3節、バマコで行われたマリ戦で、ガーナは2-1の逆転勝利を収めました。
アウェイのバマコで先制を許しながら、ガーナは58分にヌアマの同点ゴールで試合の流れを引き戻しました。
終盤は右サイドからの推進と二列目の入り直しが効き、90+4分にジョルダン・アイェウが劇的な決勝点を叩き込みます。
ビハインドの状況でも焦らず、“再現性ある崩し”を保ち、サイド起点から中央へと攻撃を収束させた形が光りました。
敵地というプレッシャーに加え、終了間際の時間帯でも冷静さを失わずに勝点3をもぎ取った姿勢は、チーム全体に勢いをもたらしました。
第4節|激しい点の取り合いを制した修正力と再現性
2024年6月10日、ホームのクマシで開催された第4節・中央アフリカ戦は、4-3の乱戦をガーナが制しました。
スコアがめまぐるしく動く展開の中、ガーナはジョルダン・アイェウの6分、60分、69分のハットトリックと、ファタウの62分のゴールで主導権を奪い返しました。
劣勢の時間帯でも守備配置の微調整やカウンター時の人数確保を徹底し、流れを自分たちへと引き戻した点が大きなポイントです。
後半の追加点は、サイドでの仕掛けから中央への侵入を繰り返した成果で、決定機を確実に仕留める精度も際立っていました。
守備面の課題は残ったものの、試合中に柔軟に形を変えながら“勝ち切るチーム”としての輪郭をしっかり描きました。
第10節|出場を決めた“1点”とその試合運びの完成度
2025年10月12日、W杯アフリカ予選最終節となった第10節・コモロ戦(アクラ)で、ガーナは1-0の勝利を収め、W杯出場を確定させました。
前半は様子を見ながらの展開が続きましたが、後半開始直後の47分、モハメド・クドゥスが値千金のゴールを決め、スタジアムは歓喜に包まれました。
右サイドでの推進からゴール前まで運ぶ流れがしっかり機能し、少ないチャンスを確実に得点につなげた完成度の高さが光ります。
同日に2位マダガスカルが敗れたことも後押しとなり、ガーナはリスクを抑えた試合運びで“確実に勝ち切る”戦術を徹底しました。
堅実な内容と決定的な結果、この試合は「勝つための1点」を用意できるチームの成熟を証明するゲームとなりました。
ガーナ代表の2026年W杯予選を支えた注目選手たち

ここでは、試合の展開だけでは見えてこない「ガーナというチームの型」を支えた選手たちに注目します。
攻撃の組み立てや守備の整え方など、それぞれの役割と再現性を通じて、チームの土台を読み解いていきましょう。
モハメド・クドゥス 仕掛けとフィニッシュの二刀流
高いドリブル突破力と得点力を兼ね備えたクドゥスは、ボールを前へ運びながら、自らフィニッシュまで完結できる選手です。
プレミアリーグ2023–24シーズンではドリブル成功数1位という記録も残し、攻撃の推進力として強烈な存在感を放ちました。
現在も欧州のトップレベルで出場を続けており、対人局面での強さを活かしながらゴール前まで到達する場面が目立ちます。
アフリカ予選でも、押し込む展開でもカウンターでも“最後まで持ち込める”という再現性が攻撃全体の質を底上げしています。
個人の突破から得点を生むその連続性は、試合の中で解を求める時間帯にこそ威力を発揮する武器になります。

トーマス・パーテイ 試合をコントロールする“ブロック前の指揮官”
パーテイは守備ラインの前で巧みにポジションを取り、相手の攻撃方向を制限するような動きで中盤を安定させます。
縦横のパスを使い分ける配球センスと、リスクを抑えながら前進させるバランス感覚が大きな持ち味です。
2025–26シーズンからはスペインのビジャレアルへ移籍が発表されており、欧州主要リーグでの出場が続く見通しです。
所属クラブが変わっても、ピッチ中央で守備とビルドアップをつなぐ“要”としての役割は変わりません。
日本としては、彼の立ち位置やパス選択に合わせた“中央の守備設計”が求められることになります。

アントワーヌ・セメニョ 縦推進と切り替えの鋭さ
縦へのスピードとフィジカルの強さで相手の最終ラインにプレッシャーをかけるセメニョは、トランジション局面で真価を発揮します。
ボーンマスでは2024–25シーズン、試合開始1分以内に先制点を奪うなど、早い時間帯で試合を動かすシーンが話題になりました。
右サイドから中へ持ち出して左足でフィニッシュまで持ち込む動きは定型化されており、一瞬で守備を崩す力があります。
前を向いた瞬間の判断スピードも早く、数的不利な状況でもゴール前まで到達できるタイプです。
日本代表が彼に対応するには、「ボールロスト直後の切り替え」で縦を止める守備対応が不可欠になります。

ジョーダン・アイェウ 経験が生む安定と落ち着き
最前線だけでなく、状況に応じてサイドへ流れながらファウルを誘い、試合のテンポを整えるのがアイェウの持ち味です。
長年プレミアで戦ってきた経験値を活かし、2024–25シーズン以降はレスターでも実戦感を保っています。
前線でのポストプレーから二列目の押し上げにつなげる「受け直し」の動きが巧みで、相手に流れを渡さない働きが光ります。
ゴールを決める場面に限らず、苦しい時間帯に“間”を作ってリズムを整えるプレーが勝点に直結する場面も少なくありません。
強度の高い試合であればあるほど、彼の「局面を安定させる力」が前線全体のパフォーマンスを底上げします。
2026年W杯予選を勝ち抜いたガーナと対戦へ 日本代表が準備すべき戦術とは?

11月14日に控えるガーナ戦(キリンチャレンジカップ2025)は、その方向性を試す絶好の機会であり、とくにトランジション(攻守の切り替え)への耐性と中央レーンの守備管理を軸に据える必要があります。
立ち上がり15分間の無失点をチーム全体の共通意識とし、ボールを失った直後の“即時圧縮”を徹底することが重要です。
攻撃面ではアウトサイドから時間を作り、二列目の飛び出しやセットプレー後のセカンドボール回収といった再現性ある形で“勝ち筋”を増やしていく必要があります。
ガーナは、少ない得点でも試合を締め切る力に長けているチーム。無理にリスクを背負わず、主導権争いを丁寧に進めることが求められます。
アフリカ勢全体のトレンドとして「守備ブロック+高速切り替え」が根付きつつある今、日本としては正確な試合運びとプレーの反復性で対抗していくのが現実的な選択肢です。
まとめ:W杯出場を決めたガーナ 10試合で示した“修正力と勝負強さ”に要警戒
ガーナ代表は、CAFグループIを首位で駆け抜け、10試合の積み重ねでW杯出場を確実にしました。
勝点や得失点差の背景には、守備の締まり、切り替えの速さ、そして前線の推進力がうまく噛み合った戦い方があります。
注目の3試合からは、逆境でも修正して勝ち切る力や、最少得点で試合を締める“勝負強さ”が見えてきました。
クドゥス、パーテイ、セメニョ、アイェウといった主力たちが、それぞれの持ち味を補い合いながら、チーム全体の強度を支えています。
日本代表は中央の守備対応やロスト後の初動、セットプレーのセカンド回収を徹底し、現実的な“勝ち筋”を積み上げていく必要があります。
