11月14日、日本代表はキリンチャレンジカップでガーナ代表と対戦します(会場:豊田スタジアム)。
その一方で、キャプテンを務める遠藤航選手は、10月のパラグアイ戦とブラジル戦を負傷により欠場しており、現時点では復帰の見通しが立っていません。
2026年のW杯本大会を見据えれば、このタイミングで無理をさせない判断も十分に理解できるところです。
実際、日本は遠藤選手が不在の中でも、パラグアイ戦での反省を活かし、続くブラジル戦では内容・結果ともに改善を見せました。
では、遠藤選手なしで中盤のバランスやビルドアップをどう補うのか。さらに、クドゥス選手を中心とするガーナの攻撃にどう対応するのか。
この記事では、遠藤選手の役割に焦点を当てながら、11月14日の試合を事実ベースで読み解き、見るべきポイントや対策を考察していきます。


遠藤航の離脱はいつから?

日本サッカー協会は、10月シリーズ(パラグアイ戦・ブラジル戦)に向けた活動について、遠藤航選手が負傷により不参加であることを10月6日に公表しました。

同日、所属クラブであるリバプールも、日本代表からの離脱を公式に発表しており、理由は“injury(負傷)”と明記されています。
なお、11月シリーズ(11月14日ガーナ戦・11月18日ボリビア戦)の日本代表メンバーは、10月22日時点ではまだ正式発表されていません。
遠藤航が不在でも、日本は“戦える準備”を整えている

遠藤航選手が不在でも、日本代表はすでに“戦える構造”を示しています。
10月14日のブラジル戦では、後半にかけて中盤の役割を再配分し、前向きのボール奪取から3–2の逆転勝利を実現しました。
この修正力が、強豪を相手にしても通用することを証明した形です。
とはいえ、遠藤選手が10月シリーズを負傷で辞退した事実は重く、11月14日のガーナ戦でも無理に起用しない判断が妥当と考えられます。
そのため、試合当日の鍵となるのは「アンカーを一人で置くのか、それとも二人で役割を分担するのか」という中盤の設計、そして右サイドから内側へ切れ込むガーナの攻撃パターンをいかに外へと誘導し続けられるかという守備の原則です。
この試合は“誰が戻ってくるか”ではなく、“どう埋めるかの精度”が勝敗を左右します。
遠藤選手の不在を前提に、どれだけ具体的に準備できているかが、日本にとっての勝機につながるでしょう。
遠藤航が抜けると“何が失われるのか”?守備・前進・統率の影響を分解

遠藤航選手の不在が意味するものは、単に「選手が1人いない」という以上の影響をもたらします。
ここでは、守備・ビルドアップ・リーダーシップという3つの機能に分けて、その影響を具体的に見ていきます。
守備の統率力 プレストリガーと縦ズレ修正の不在
遠藤航選手は、日本代表の主将として、守備時の合図出しやラインコントロールを担ってきました。
最終ラインの前で相手の攻撃を潰すプレーや、こぼれ球の回収、味方の縦ズレを修正する動きは、強豪相手でも終盤の粘りを支える土台になっています。
10月14日のブラジル戦では歴史的な勝利を収めましたが、本来であれば遠藤選手が担っていた“締め”の役割を今後も安定して再現できるかは別の問題です。
キャプテンとしての統率や判断、アンカーとしての守備的な盾が同時に欠けることで、プレッシングのやり直し距離が伸びたり、ペナルティエリア前のセカンドボール対応が後手に回ったりするリスクが高まります。
ビルドアップの起点 安全な前進とカウンター抑止
遠藤選手は、ボール奪取直後の「安全な前進」を組み立てる役割も担っています。
緩急をつけたパス配球や、万が一ボールを失っても即座に回収できる配置作りによって、カウンターの芽を抑えることにも貢献しています。
クラブでのプレー解説でも「ルーズボール回収と循環の要」と評されるように、代表でも同様の存在です。
アンカーを起点とするビルドアップが不安定になると、サイドやインサイドハーフの立ち位置に無理な調整が生じ、かえってリスクを呼び込みかねません。
結果として「前に進む」ことはできても、「守りながら進む」再現性が下がり、ガーナの速い切り返し、”とくに中央から外、再び中央へという再侵入パターン”への対応が難しくなります。
リーダー不在の影響 試合運用やメンタル面での支えが薄れる
遠藤選手はキャプテンとして、試合のテンポや“間合い”のコントロールにも大きく関与しています。
リード時には守備ブロックの高さを調整し、同点時にはボール保持で時間を作り、アディショナルタイムには試合運びを最適化する。
こうした細かな運用は、経験と声の力に裏付けられた部分が大きく、代役での再現は簡単ではありません。
遠藤選手がピッチにいない場合、誰がこの試合運用を引き受けるのかが勝敗に影響します。
とくに、ガーナのクドゥスのように一瞬で流れを変える力を持つ選手が相手の場合、終盤の“間”の扱い方には、代替キャプテンの経験値が問われます。
遠藤不在で“どう埋めたか”?10月14日ブラジル戦の実例を検証

遠藤航選手が欠場した中でも、日本代表はブラジル戦で内容と結果の両方を引き寄せました。
ここでは、試合後半に見られた中盤の再編成と前線の守備戦術を具体的に振り返り、その再現性を考察していきます。
中盤の役割再配分 アンカー共有と可変システムの活用
10月14日に行われた日本対ブラジル戦では、日本代表が前半0–2から逆転し、歴史的な勝利を収めました。
後半、日本は特定の選手にアンカーを固定せず、ダブルボランチを軸に中盤の守備バランスと配球の安定を図る可変的な構成が見られました。
ボール保持時には、IHの一人が中盤低めの位置から配球に関与し、非保持では前線の選手と連動してボール奪回に関わる場面が増加しています。
こうした修正が奏功し、52分(後半7分)に南野拓実、62分(後半17分)に中村敬斗(※一部報道ではOG扱い)、そして71分(後半26分)に上田綺世がゴールを決めました。


前線からの守備 “前向きの奪回”で生まれた逆転劇
この試合で逆転の焦点となったのが、高い位置での二次回収でした。
日本代表は、前線の選手たちが前からのプレッシングを仕掛け、ブラジルのビルドアップに揺さぶりをかけていきました。
相手のパスミスや判断の遅れを誘発し、奪った直後にボールホルダーへ圧をかけることで、速攻へ移る流れが繰り返し見られました。
62分の中村敬斗のゴール(※一部報道ではOG扱い)はその象徴であり、71分のCKからの得点も、直前の主導権確保が背景にありました。
※試合経過や得点者はJFAの公式記録および国際メディアでは、一部に表記の違いが見られます。
ガーナの脅威を読む 得点ルートとキープレイヤーの“型”

ガーナ代表が得点を生み出す典型パターンを掘り下げることは、11月14日の対戦で備える上で極めて重要です。
ここでは、右サイドからの切り込みによる得点パターンと、その動きに連動する“二次波”の連鎖という2つの視点から、ガーナの攻撃パターンを読み解きます。
右起点 → 内切り → 左足フィニッシュ(マハメド・クドゥスが絡む典型ルート)
ガーナの主要な攻撃パターンの一つは、右サイドで前を向いた選手が内側へ差し込み、左足でフィニッシュする一連の流れです。
とくにクドゥス選手は右サイドでの起用が多く、相手DFを引き出したうえで内側に切れ込み、左足でシュートや決定機のパスを選択する場面がしばしば見られます。
この“型”は代表戦でも実際に得点へ直結しており、たとえば2022年W杯の韓国戦では2得点を記録。
加えて、クラブ・代表を通じて決定局面への関与率が高いことは複数の分析レポートでも指摘されています。


二次波の差し込みと“逆サイド”到達(型が生む連鎖)
クドゥスの内切りに対応して守備が中央へ寄ると、一般的にその背後で“二次波”が生じやすい局面が生まれます。
ドリブルで重心を内に引き寄せた後、弾かれても仲間がこぼれ球を拾い、逆サイドへ展開する狙いやすい形につながります。
実際、AFCONのエジプト戦やW杯予選のコモロ戦では、個の突破から押し上げて決定機を生む連続攻撃の場面が見られました。
こうした連鎖は、クドゥスを起点に周囲が回収と展開を速めることでチーム全体の圧力を高めていると複数の分析で指摘されています。
2026年W杯へ 遠藤航の“新たな役割”と育成体制の展望

日本代表はすでに出場権を得ており、これからは「どう勝つか」を見据えた準備が本格化しています。
ここでは、遠藤航選手の新たな役割と、その価値を次世代へどう受け渡していくかという育成体制の展望を整理します。
出場の有無に左右されない“価値”の明文化
すでに2026年W杯出場を決めた日本代表にとって、今後は「本大会で勝つ」ための戦力構築が一層問われています。
その中でキャプテン・遠藤航選手の役割をどのように位置づけ、誰が次世代の担い手となるかは、チーム全体の完成度に直結すると考えられます。
遠藤選手は「W杯で勝つ」と語ると同時に、クラブ公式でも日本代表主将として紹介されており、出場の有無に関わらずチームの判断基準となる“軸”としての価値は揺るぎません。
10月14日のブラジル戦では、0–2から3–2への逆転を通じて、終盤の試合運用や精神的な耐性に一定の再現性が示唆されました。
この「試合運用の型」は、遠藤選手が復帰した場合もシームレスに統合されるべき資産であり、彼不在時でも複数の選手が分担できる体制を整えることが、今後の強化の焦点になり得ます。
アンカーの次世代設計と“並走型育成”の必要性
2026年の本大会を見据えるうえで、遠藤航選手が担ってきたアンカーの役割を、単独・共有の両面で再現できる選手層の構築が重要になっています。
遠藤選手が出場する試合では、単独アンカーによる安定感が期待されますが、連戦や試合展開によっては、ダブルボランチで柔軟に対応する形も効果的でしょう。
実際、10月のブラジル戦では後半に前線からの圧力が機能し、高い位置での回収を通じて主導権を握る時間帯が増えました。
この再現性をどう次戦に活かすか、11月14日のガーナ戦は、その運用を実戦で試す絶好のタイミングといえます。
右→内→左足という“クドゥス型”の動きに対して、守備原則や配置精度を高めることは、2026年大会に向けた戦術的な積み上げにつながります。
すでに日本代表は「勝つための準備段階」に入り、遠藤選手を中心に据えながら、新戦力との“並走育成”を進めていると見られます。
まとめ:11月14日の注目点は“誰が出るか”より“どう埋めるか”
11月14日の日本代表対ガーナ戦に向けて、遠藤航選手は依然として負傷明けの状態が続き、招集・出場に関しては日本サッカー協会の公式発表を待つ段階です。
ただし、10月14日のブラジル戦では遠藤不在の中でも、日本は3–2で勝利し、役割分担と高い位置でのボール奪取によって試合を優位に進める時間帯を作りました。
ガーナでは、モハメド・クドゥス選手が右サイドからのカットインを得意とし、アフリカ・ネイションズカップでの2得点(vsエジプト)を含めた攻撃力は警戒対象です。
クドゥスの侵入をいかに制限し、内側を締めつつ外側へ誘導する守備原則をどこまで再現できるかが大きなカギとなります。
また、「遠藤が出るか否か」よりも、「遠藤がいない前提」で戦術をどれだけ精密に仕込めるかが試合を左右します。
アンカーの役割を1人で担うか、2人で分担するかなど、中盤構成の柔軟さが重要になるでしょう。
試合は11月14日(金)19:20キックオフ/会場は豊田スタジアムです。
試合の“見どころ”を押さえておけば、スコアだけでなく内容からも多くを読み取ることができるはずです。

