車のファンベルト(補機ベルト)は、エンジンの駆動力を使ってオルタネーターやエアコン、パワーステアリングなどを動かす大切な部品です。
もしこのファンベルトが走行中に切れてしまったら、どうなるのか…想像するだけでも不安になりますよね。
この記事では、ファンベルトが切れた際に起きる症状やリスク、異変にいち早く気づくためのポイント、そして早急に取るべき対応について詳しく解説します。
ファンベルトが切れた瞬間、車はどうなる?

ファンベルトが突然切れても、意外なことに「すぐには何の症状も出ない」ことがあります。
そのため、運転中に気づかず、そのまま走行を続けてしまうケースも少なくありません。
音で気づくのは難しいことが多い
ファンベルトが切れる瞬間、「パンッ」「バチン」といった破裂音が聞こえる場合もあります。
しかし、その音はエンジン音にかき消されたり、ラジオやエアコンの風音などで聞こえないことが多く、走行中に音だけで異常を察知するのは難しいのが現実です。
特に最近の車は防音性が高いため、ベルトが切れても「音では全く気づかなかった」というドライバーも少なくありません。
ファンベルトが切れてもすぐさま異常が出ない場合があるので要注意
ファンベルトが切れても、エンジン自体はしばらく正常に回るため、何の不調もないように感じてそのまま走り続けてしまうことがあります。
ですが、ファンベルトが動かしていた各装置は機能しなくなるため、数分〜十数分のうちに徐々に不調が現れてくることが多いです。
このタイムラグが判断を遅らせ、結果的にエンジンのオーバーヒートを招いてしまう恐れがあります。手遅れになる前に、できるだけ早く異変に気づくことが何よりも重要です。
ファンベルトが切れたことにいち早く気づくためにはどうすればいい?

ここからは実際にファンベルトが切れたときに現れる症状を、気づきやすい順に解説していきます。
ファンベルトが切れると、さまざまな重要機能が徐々に停止していきます。以下のようなサインに気づけるかどうかが、早急な対応のカギになります。
エアコンが突然効かなくなる
ファンベルトはエアコンコンプレッサーも駆動しているため、ベルトが切れた瞬間から冷風が出なくなり、送風だけになるのが特徴です。
真夏や炎天下では気づきやすい症状ですが、季節によってはこちらの症状では気づけない場合があります。
ハンドルが突然重くなる(※車種により異なる)
油圧式パワーステアリング(HPS)を搭載した車では、ファンベルトが切れるとポンプが動かなくなるため、急にハンドルがずっしりと重くなります。
この変化はかなりわかりやすいです。
一方で、近年の多くの車では、
電動パワステ(EPS)が採用されており、このタイプではファンベルトとは関係なく動くため、ハンドルの重さで異常に気づくことはできません。
バッテリー警告灯が点灯する(バッテリーが上がる)
オルタネーター(発電機)もファンベルトで駆動しているため、切れるとバッテリーに電気が供給されなくなり、メーター内のバッテリーマークが点灯します。
普段からメーターを見ていないと見逃しやすい点でもあります。
高温警告灯が点灯する(エンジンがオーバーヒートする)
冷却水を循環させるウォーターポンプもファンベルトで動いている場合、ベルトが切れると冷却水が循環せず、エンジンがどんどん高温になります。
その結果、メーターに高温警告灯が表示され、最悪オーバーヒートを起こします。
※一部の車種ではウォーターポンプが電動の場合もあり、ベルト切れとは関係しないこともあります。
重要なサインに気づいて未然に防ごう!

ベルトが切れる前に異音が発生するケースもあります。以下のような音に注意しましょう。
- 「キュルキュル」「チュルチュル」といったすべるような音
- 特にエンジン始動時、エアコン作動時、加速時に出やすい
- 湿気が多い日や雨天時に目立つこともある
こうした音は、ファンベルトが伸びて張りが弱くなっていることで、プーリー(滑車)とベルトがしっかり噛み合わず、空転してしまうために発生する「滑り音」です。
放置しておくと、ベルトが過度に摩耗し、最終的に断裂する原因にもなるため、早めの点検・交換が必要です。
加えて、「コンコン」や「ゴトゴト」といった異音がファンベルト周辺から聞こえることもあります。
これは、ベルト自体の摩耗、張り不足、またはプーリー(滑車)との接触不良が原因で起こる異音です。例えば、劣化によりベルトの表面が波打っている場合にも発生します。
このような音も見逃さず、異常を感じた場合は速やかに整備工場で点検してもらうことが大切です。
ファンベルトの交換時期と費用は?目安と判断ポイントを解説

走行距離の目安:5〜10万km
ファンベルトの寿命は、おおよそ5万km〜10万kmとされています。
ただし、以下のような使い方では劣化が早まるため注意が必要です。
- 渋滞の多い地域での走行(発進・停止の頻度が高い)
- エアコンの頻繁な使用
- 屋外駐車で直射日光にさらされる環境
走行距離はあくまで目安であり、異音や見た目の劣化があれば距離に関係なく早期交換を検討すべきです。
使用年数の目安:5〜7年
走行距離が少なくても、年数によってゴムは自然劣化します。
とくに屋外駐車の場合、紫外線や雨風の影響で劣化が進みやすくなります。
- 走行距離が短くても5年以上経っていれば点検の必要性
- 7年を超えて未交換なら予防的な交換を推奨
交換費用の相場:1万〜2万円前後(工賃込み)
ファンベルトの交換費用は、車種やベルトの本数によって異なりますが、おおむね以下の範囲です。
項目 | 費用目安(税・工賃込み) |
---|---|
ファンベルト単体交換 | 約6,000〜12,000円 |
複数ベルト同時交換(例:エアコン・パワステ含む) | 約12,000〜20,000円 |
※ディーラーや整備工場によって料金は異なります。
※ベルトが複数本に分かれている車種もあるため、正確な費用は見積もりを推奨します。
まとめ
ファンベルトが切れると、その瞬間には気づかないことが多く、見逃して走行を続けてしまう危険性があります。
しかし、走行中に必ず何らかのサインが現れます。
以下のような兆候に早く気づくことが、安全に繋がります。
- メーターの警告灯の点灯(バッテリー・冷却水温など)
- エアコンが効かない、ハンドルが急に重くなる
これらのサインを見逃さず、早期に対応することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
「何かおかしい」と感じたら、迷わず安全な場所に停車し、異常がないか確認しましょう。
異常があれば、すぐにJAFや任意保険のロードサービスに連絡・相談することが重要です。
迅速な対応が、あなたと車を守る第一歩です。